前回までのあらすじ
パトリチェフと逃げるヤン、彼が肉壁となりヤンを奥へと逃がします。ユリアン達も突入し、地球教徒の仕業と知り慌ててヤンを探します。ヤンは狂信者に左足を撃ち抜かれ、ついには立っていられず、私がこれまで流してきた血の量に比べればささやかなものかとしゃがみます
ごめんフレデリカ、ごめんユリアン、ごめんみんなと謝りヤンの時は33歳で停止します…

ヤンの死も時間だけは刻々と過ぎていき…
ユリアンはヤンの亡骸を発見、発狂して地球教徒を皆殺しにします。マシュンゴに止められ正気に戻り、イゼルローンに、家に帰りましょうと嗚咽します。シェーンコップはブルームハルトを見送り、ヤンの死を悔い生き残りの地球教徒を核融合炉に放り込んでやると言う部下にイゼルローンの方が大きい奴がある!と凄みます
フレデリカに誰が話すかで揉め、オルタンスはユリアン以外にいないと諭します。フレデリカは瞬時にその事を悟り、ヤンがこんな死に方する人じゃないのよと穏やかな老後を考えていました。フレデリカは静かにもう少し落ち着いたらあの人に会いに行くとします
ヤンあっての革命軍だった為、分裂は必死、シェーンコップは全銀河系に向けて発表すれば良いとし、その兇報をヒルダから聞きラインハルトは激昂します…彼には敵が必要なのです。森林公園でユリアンはカリンから秘伝の疲労回復薬を貰い咽り、巨大な喪失感の中それでも生きて行かなくてはなりません
帝国軍も脱力感に包まれ皇帝の指示をただ待ち受け、恐らく最も衝撃を受けたのは皇帝です。一方ロイエンタールに屈辱を感じたラングはドミニクからコールラウシュとその子を見せられロイエン~の弱みを見つけ、これは裏でルビンスキーが暗躍しています
ロイエンタール叛意の噂
矛を交える双璧は’’気合入れ’’はここまでとし、皇帝の音沙汰を待ちミッターマイヤーはバイエルラインに我が軍にはあの男が必要だったのでは?と問われさてな…と朧気です。イゼルローンの今後についてヤンの意思を引き継ぎロムスキーに代わる政治的指導者はフレデリカに決まります
軍事的指導者はユリアンしかおらず、彼は反対しますが周りの大人に後押しされます。森林公園のベンチでフレデリカに諭されご立派ですと返すとフレデリカは本音を吐露し泣き、ユリアンは彼女をジェシカのようにしてはならないと軍事的指導者になる事を決意します
オーベルシュタインからロイエン~に不穏な気配があると報告が入り、それはラングからのものでルッツの調べでリヒテンラーデの一族に間違いなく、子を身籠った時この子の為により高きを目指そう…と話していたようでミュラーがロイエン~を皇帝の命で拘禁します
ミュラーの尋問に歪んでいるのは承知で彼女を私邸に置いたのは不名の為す事と認めつつ子の事は知らず親になる資格が自分にはないと冷淡です。叛意は誓ってないとし、ラインハルトが現れ5年前の忠誠を誓約された夜の事を覚えているか問い、一日足りとも忘れた事はないと言うロイエン~に皇帝は納得します
ヒルダの物語の大きな転換点
イゼルローンではポプランがやけ酒を飲んで荒れており、ユリアンが新司令官と聞き心を入れ替えます。しかしポプラン同様従順な反応は稀で、ムライは不平分子や動揺した連中を引き連れイゼルローンを出て行くと志願します。ムライは損な役回りを敢えて志願しエル・ファシル独立政府は解散を宣言します
皇帝からのロイエン~の処分は総帥本部総長の任を解き旧同盟領全域の総督を命じられこれは各省の尚書に匹敵する破格の抜擢です…つまり銀河の半分である旧同盟領を全て任されたのです。ルビンスキーは発作に苦しみドミニクはルパートの祟りだと薬を渡します
ヤン暗殺・ロイエン~騒動の後人心地ついたタイミングでヒルダの物語です。後宮で浮いていた男勝りのヒルダにアンネローゼは理想の女性像で、数々の昔語りからフェザーンへの遷都で皇帝の居城「獅子の泉」の建設も始まり、アンネローゼをお招きするか問うとフェザーンにはキルヒアイスの墓があると憂慮します
ラインハルトはヒルダに心を開き、姉やジーク兄に少しでも近づけたと感じますーと呑気に考えていたのも束の間、フェザーンの戦没者墓地の完工式に赴いたラインハルト、そこで親衛隊が不貞の輩を発見、彼からヴェスターラントを忘れたか?と問われ皇帝は揺らぎ処罰もならんと肩を落とします
酒に溺れ落ち込むラインハルトをヒルダが慰めると、何とラインハルトは帰らないで欲しい、予を1人にしないでくれとヒルダの物語が大きな転換点を迎えるところでこの巻は終わります
まとめ
ヤンという光を失いそれでも刻々と時は過ぎ、残された者は現実を少しずつ受け入れフレデリカとユリアンが跡を継ぎ民主共和制の灯を絶やしてはならないと少数精鋭となります。ヤン頼みの連中がほとんどですから離脱者も続出、ムライが不平分子を引き連れて損な役回りを敢えてしてくれます
ユリアン達当事者ですら激震ですから、ライバル関係にあったラインハルトの失望も壮絶を極めます。最早生きがいだった好敵手を失い、彼の覇気を何処へ向ければ良いか同情に値します。そんな中例のラングの個人的恨みもありロイエン~謀反の報が入り、結果旧同盟領総督という大抜擢で丸く収まります
ルビンスキーは常にこの銀河を天秤に掛けるが如くバランス取りに躍起になり、帝国の1人勝ちとさせないよう企んでいますが、どうやら重病でもあるようで先が読めません。そんな中ヒルダの栄達が語られ、シンデレラストーリーのような彼女に何と恋の急展開です
発端は完工式でのヴェスターラントの件を蒸し返された事で、実はずっと気に病んでいたラインハルトは酒に溺れ弱い自分を呪い、優しくしてくれたヒルダに何と帰らないで欲しいと請うのです!藤崎竜版ではより男勝り的な体で描かれた来たヒルダですが、女としてこの大事な局面でどう立ち振る舞うか興味深いです
戦争・昇進・男の友情等描かれる場面が多く、どちらかというと女性陣の出番が少なめの銀英伝ですが、その女性陣1人1人の立ち位置は非常に重要で、大きな意味を持ちます。より今風の女性として描かれたフレデリカ同様原作とは若干異なったキャラ設定となっており、そこもまた楽しめる要素です
29巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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