前回までのあらすじ
皇帝はルッツを元帥に叙し、以前ロイエンタールを煽った件からその考えは今も変わらぬと実力のない覇者が打倒されるのは当然の事だとします。足枷の取れたロイエン~がベルゲングリューンに皇帝に忠誠を誓うなら今ここで俺を殺せ、でないと皇帝にとって災厄となるだろうと凄みます…

親友同士の酷な「双璧の戦い」へ
ユリアンに好意的な者もいればそうでない者もおり、ヤンの死に方を蔑むのでユリアンは暗殺された人間は戦死した人間より格が下だとでも言うのか⁉と激怒します。ポプランが仲裁に入り例のロイエン~反逆の件で皇帝行方不明と伝えられ、ヒルダも案じています
「影の城」に続き「三元帥の城」も建設中で、ミッターマイヤーは皇帝捜索の指揮を執り、ラインハルトは自分の領土で重臣を殺され虜囚を恐れて逃げ回る屈辱を受けます。ワーレンに救われフェザーンに戻るとロイエン~からやっと来た通信文は謝罪も弁明もない完全なる敵対意思の表明でした
皇帝は激昂しミッター~に討伐を命じ、オーベルシュタインからラングが関与との報を受けミッター~はラングに詰め寄り、ミュラーに諫められ勅命謹んでお受けしますとかくて双璧は相撃ちます…所謂「双璧の戦い」です。俗に「皇帝病」と呼ばれる発熱は膠原病の一種らしく皇帝を苦しめます
グリルパルツァーの野心
ヒルダはオーベル~を問い詰めると吐き気がして、これは彼への嫌悪ではなくつわりだと気付き慌てます。ミッター~はエヴァに報告しフェザーンを後にします。4万2770隻、ビッテンフェルト・ワーレンを指揮下に置きます。その後ろから皇帝がアイゼナッハ・ミュラーと共に、更にイゼルローン回廊からメックリンガーが二正面作戦です
ユリアンはヤンの後継者としての器量が問われます。ロイエン~もイゼルローンに使者を送り通過を阻止してくれたら旧同盟領をくれてやると…グリルパルツァーは野心を示しロイエン~が覇業を成就された暁には軍務尚書と帝国元帥の地位を欲し確約され、盟友=クナップシュタインを説得します
兵士達は戦う理由について論じあい、逆賊ではなく陛下をないがしろにする奸臣や佞臣どもを打倒すると一致し離脱者はほとんど出ませんでした。破滅へと向かうロイエン~は自虐し信じられないスピードでベイオウルフが接近、疾風ウォルフの艦隊です
ミッター~は通信で説得を試みますが、ロイエン~は血の色をした夢に酔っています。交渉は決裂し、ミッター~はロイエン~の大馬鹿野郎と絶叫します!先行したミッター~艦隊不利な中戦端が開かれロイエン~有利ですが、ここでイゼルローンにムライが使者として現れます
味方してくれるなら旧同盟領全域を返還し、トリューニヒトの身命を差し出すと大胆不敵な申し出で、ユリアンは熟考の上断り、ムライは判断を誤れば出しゃばってでも制止せねばと考えており心配は無用でヤンの一番弟子だと最高の賞賛の言葉です
無限に湧き出る帝国軍にヤンの苦心が染み入るロイエンタール
カリンに怒られたのか褒められたのか不明な中(笑)、今度はメック~から通過を認めて頂きたいとユリアンは難題が山積みです。ミッター~の攻撃は苛烈でクナップ~の動きが鈍いです。遅れて来たバイエルラインが馬鞍形のロイエン~、更にグリル~の餌食となる中、ここで黒色槍騎兵艦隊到着です
敵となれば脅威のビッテン~をベルゲン~が正面衝突、更にワーレンも現れ盛り上げてくれます。クナップ~はグリル~がいつ裏切るかで焦っていました。2重の裏切りに心揺れるクナップ~は精彩を欠き不甲斐なく戦死、ここでロイエン~が複雑な陣形に打って出て長蛇陣です
ミッター~は紡錘陣で突破、円錐陣に変更し混戦です。ビッテン~は半分は旧ファーレンハイト艦隊の混成軍で統一性に欠き、更にワーレンも急襲、旗艦への被弾で彼は再び義手を失います。ところがミッター~反撃に加え皇帝の大艦隊も迫り、ロイエン~はやっとヤンの苦心に染み入ります
完全に裏切るタイミングを逸したグリル~、メック~の前進もあった為ロイエン~が殿となりハイネセンを背に布陣する事になり、グリル~が最悪のタイミングで裏切りロイエン~の旗艦が被弾、彼が血を流し崩れ落ちる場面でこの巻は終わります
まとめ
皇帝の逃避行からロイエン~の謝罪はなく、完全に袂を分かつ形となり、残酷にも皇帝は親友のミッター~に指揮権を委ね、所謂「双璧の戦い」となります。ヤン亡き今ロイエン~に敵う良将は彼しかいません。真逆の性格ながら妙に気の合った2人が戦場で相まみえる悲劇となります
ミッター~も語っていた通り実力的にはロイエン~の方が上だったかもしれません。しかし帝国軍の無限の戦力で倒しても倒しても次の強敵が湧いて出る様は、ヤンがどれ程苦労して帝国と戦って来たかロイエン~は身に染みる事になります…数に勝るものはないのです
グリル~は地球教徒・フェザーン・ラング等とも通じ野望多き者でしたが役不足感が否めません。次代の双璧と謳われながら、クナップ~の揺れと共に裏切り時を完全に逸し、あろう事かロイエン~が殿を務めると決めた最悪のタイミングで裏切りロイエン~は被弾から血を吐き倒れます
ここまで来るとどの役者が亡くなってもおかしくない展開になって来ました。多くの個性的なキャラが出て来ましたが、この物語も終幕が近づき、お話の畳み方も重要となってきます。田中芳樹先生は多くのキャラを死なせて来ましたが、次は誰が…と気が気でないですね!32巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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