「バガボンド」2巻の数々の激戦と成長譚~山狩り強化も捕まらぬ武蔵、新たな刺客はおつう??捕らえられ吊るされた武蔵の改心、一筋の光が…~

前回までのあらすじ

事情を察した武蔵は裸で飛び出し、侍を叩き倒します。「俺を殺す気なら殺すぞ」と息巻きます…

鬼の武蔵と沢庵坊主と辻風黄平

青木武蔵の闘いっぷりに見入りながら、「己の死が近づいた時の恐怖に凍る顔を見るのはたまらんぞ」と呟きます。しかし青木武蔵の一刀に倒れます。まるで鬼の所業、宮本村の恥じゃと松じいは嘆きます。茂一もやられ、「悪鬼じゃ、寒気がする」と言われ、武蔵は気に入ったのか、逃げ出します

走っていると縄の罠に引っ掛かり、そこには坊主がいます。坊主は「大物のようだが、肝は小せえなあ」と言います。「人を寄せ付けないのは人が怖いから。お前はこの村で一番弱い」と言い切ります。追手が迫り、その坊主沢庵)は武蔵の行先をごまかすと、武蔵はいらぬ世話だとぼやきます。沢庵は居所を大声で言ってしまいます

翌日から山狩りは強化されますが、武蔵は一向に捕まりません。負傷した青木おつうにお酌をさせようとします。沢庵おつうを連れ、青木を挑発します

武蔵は突然襲われます。瞬時に山狩りの者ではないと悟ります。男は辻風黄平なのです!マウントを取られ、殴られますが、脚に一撃を加え、両者は離れます。互いに剣で勝負、黄平の刀が武蔵の腕を斬ります!黄平は素早く、武蔵の剣は当たりません

黄平典馬は自分が殺すはずだったと言います。武蔵の気合の一撃は黄平の頭巾をかすめ、血が滲みます。追手が迫り、黄平は素早く逃げ出します。取り囲まれた武蔵は17年、何のために生きたのかと述懐します。追手を壊滅させ、この先に何があると空しくなります

一番強いのはおつう

青木に大きな態度を取る沢庵おつうはハラハラします。村人を山狩りに駆り出していることに苦言を呈し、おつうに山に行けと言います。いつまでも剣を振らない青木を再度挑発し、怒った青木はやっと剣を振るいますが、腰が入っていないため、沢庵の腕の皮一枚しか斬れません

青木はやっと相手が沢庵宗彭、姫路城主池田輝政の無二の親友だと悟ります。切腹確実の青木の首をおつうが繋いでくれると言い、なんと沢庵おつう武蔵を捕らえに行くのです!

山では追手の死骸が無数にあります。勿論殺したのは武蔵です。念仏を唱えながら、夜、沢庵おつうは鍋を作ります。その匂いに武蔵は釣られます。沢庵おつうが最近塞ぎこんでいることを指摘すると、理由を話します。又八の良いところは、村の外れ者だった武蔵といつまでも仲が良かったからそこが好きと言います

おつう武蔵が怖くないのです。沢庵おつうが不思議なことを言っていると言います。屁をこきながら、沢庵武蔵に語り掛けます。フラフラの武蔵に、おつうは幼い頃のままの様子で、「お甲ってどんなひと?」と泣きつきます。武蔵は手出し出来ません。おつうはまた捨てられたと呟きます

一番強いのはおつうだったと言う沢庵、気を失った武蔵を捕らえます。

自分と向き合わせる沢庵

武蔵は寺の前の大きな木に吊るされています。早く殺せと呪いますが、沢庵は放っておきます。やがて雨が降り、おばばはよいザマだと蔑みます。翌朝も見に来たおばば、小便をかけられ、怒ります。武蔵は母のことを思い出します。天下無双になりたかっただけなのにと思案しています

おつうは残しておいた握り飯を棒の先端に付け、武蔵に食べさせようとします。しかし上手くいきません。沢庵が現れ、おつうは逃げ出します。武蔵は縄を揺らし、殺せとアピールしますが、沢庵は何もしません

翌日おばばおつうを連れて帰ろうとしますが、又八の裏切りが許せないおつう本位田家に入るつもりはないときっぱり言い切ります。その夜武蔵は再度縄を揺らし殺せとアピールします。沢庵は「もうそこからの景色も見飽きたろう…そろそろおのれを眺めてみたらどうだ」と言います

おつうは再度握り飯を食べさせようとしますが、再度失敗します(笑)。翌朝「武士らしく死にたいか?」と沢庵は聞きます。「お前に殺された者にもそれぞれの人生があったのだ。彼らの人生をお前が終わらせたのだ」と言うのです。自分だけ勝手に死なさせないということです

武蔵は天下無双を想いながら、父とのやり取りを思い出します。新免無二斎は天下無双は二人はいらぬと武蔵に手をかけようとします。武蔵は思い出し涙します。そこに辻風黄平が現れます。黄平は縄を斬って、武蔵を斬ろうとすると、物凄い殺気を感じます

黄平は逃げ出します。確実に斬られていたと述懐します。殺気は沢庵のものでした。翌朝縄が斬れているのを見つけたおばば武蔵は死んだのではなく、沢庵が逃がしたと悟ります。沢庵武蔵をおぶり、死に場所を選ばせてやると言います

まだ生きていていい

宮本村を見渡せる場所で、沢庵武蔵に思い通り生きただろう、笑えと殴ります。武蔵は岩に頭を撃ちつけます。沢庵が止め、「殺すのみの修羅のごとき人生が本望か…お前はそんな風に出来ていない」と語り掛けます。武蔵はまだ生きていいのかと涙します

縄を斬った沢庵は、「闇を抱えて生きろ。やがて光も見えるぞ」と言うとおつうが現れ、この巻は終わります

まとめ

追手を無慈悲に殺戮しまくる武蔵、まさに鬼の所業です。武蔵を捕らえるために村の者まで駆り出され、いい迷惑ですが、一人捕らえるためにこれ程の労力をいつまでもかけている訳にもいきません。沢庵おつうを連れて山に入ります

沢庵には狙いがありました。鍋の香りで武蔵を誘うと、無防備な昔のままのおつうに抱き着かれ、武蔵は無力に力尽きます。鬼のような武蔵をも恐れぬおつうが一番強かったというくだりでは、彼女の健気さや、男の無力さ、そして武蔵を継ぎ止めていた最後の力が尽きたことを思い知らされます。鬼の武蔵おつうの前では無力だったのです

寺の前で吊るされた武蔵に、沢庵は何もせず、自分と向き合うように仕向けます。沢庵の思惑通り、様々なことが頭を過ぎる中、武蔵はちっぽけな自分に気づきます。そして多くの人を殺してきた罪深き自分にも。辻風黄平の横槍も入りますが、それをきっかけに沢庵武蔵を山へ連れていき、改心させます

沢庵の懐の深さ、そして、生きていて良いという教えは、修羅の道を進んでいた武蔵に一筋の光を照らします。先の見えないどん詰まりに来ていた武蔵、今後も何度もこのどん詰まりにぶち当たる訳ですが、今回は一先ず光が見えてきました。自分と向き合い、見えてくるというものもあるのですね

おつうも現れ、物語は先に進みます。今後剣豪と言われる武蔵がどんな旅をしていくのか、見届けましょう!!

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