前回までのあらすじ
スポークスマンとしての才能も発揮するユリアン、給料分は働くとヤン艦隊出動です。ビュコックはグリーンヒルを信頼しており虚を突かれ囚われます。トリューニヒトは地下に潜伏し消え、グリーンヒルはビュコックを諭しますが2人は分かり合えません。ヤンはシャンプールの攻略に当たります
マロン大佐が待ち構える中、薔薇の騎士降下ポッド射出でシェーンコップがイゼルローン奪取以来の舞台だ、勇名を轟かせと気張ります…

シャンプール市街戦
クーデター側も一枚岩ではない中、薔薇の騎士第13代連隊長としてシェーンコップが降伏勧告をし、マロンは拒絶しヤンは市街外周陣地を消滅させ薔薇の騎士は数の上では不利な中突入します。妨害電波を発生させ、街を孤立化させリンツ中佐は各ブロック同時並行的に前進させます
するとシェーンコップ自ら敵ビルに突っ込み、トマホークで一閃し3日で終わらせると凄みます。半重力の盾を発生させビームを跳ね返し無双、占領し旗を振り、狙撃手の格好の的ですが煙幕で守られ女の子を見つけます。足がかりとなる「点」を独力で奪取し「線」にする行動が求められます
槍機戦術で「線」を確保、今度は「面」にしていき、この繰り返しで都市の制圧は進んでいきます。それでも制圧には10日掛かる算段な為、シェーンコップは夜襲を行いますが流石に楽観視し過ぎです。強引に囲みを突破しマロンを追い詰め、彼は自決、結局3日で終わらせた薔薇の騎士の戦術能力が極めて優れていたのです
顔中キスマークのシェーンコップ、美女からと思いきや助けた女の子からでした(笑)シェーンコップはヤンを独裁者ヤン・ウェンリーになれと煽り、ローエングラム候とも対等に戦える、五分の戦力ならあなたが勝つとまくしたてますがヤンは取り合いません
「スタジアムの虐殺」とバグダッシュのヤン暗殺未遂
ハイネセンへ急ぐヤン、その頃「スタジアムの虐殺」が起こっていました。ハイネセン記念スタジアムで30万人を超える集会が行われ、首謀者はジェシカです。救国軍事会議は慌てクリスチアン大佐を向かわせ、ジェシカは堂々と対します。10人ばかり並ばせ暴力を振るうクリスチアン、ジェシカも襲われ民衆は暴徒化します
「スタジアムの虐殺」は死者だけで市民2万人・兵士1500人にのぼり、ジェシカも亡くなります。その報告を受けグリーンヒルは戦慄し、報道管制を徹底しますが同盟全土に広まります。フレデリカからその報を聞きヤンは司令官室に籠り表情を人に見られないようにし、翌日にはいつもと変わらぬヤンに戻っていました
完全にクーデター派は非難されシトレが地方で市民を煽り形勢逆転な中、リンチはヤン暗殺だとバグダッシュを送り込みます。シェーンコップは義勇軍等増えた味方の中に暗殺者が紛れ込む可能性を指摘、フレデリカは血眼になって探し当て、バグダッシュに目を付けます
後方支援の天才=キャゼルヌが完璧な補給を滞りなく行う中、バグダッシュがヒューべりオンに侵入、ヤンを狙うとユリアンが守り、バグダッシュは言葉巧みに情報部所属だと取り入り、顔の知れているフレデリカは敢えて自室でオンライン勤務とし会わせず、彼から情報を聞き出します
ルグランジュ中将が待ち構えており、アルテミスの首飾りと挟み撃ちにする算段で、ヤンは首飾りを全て徹底的に破壊すると結局コーヒーは飲まずあくまで紅茶党です(笑)危険視したシェーンコップはバグダッシュと酒盛りし、フレデリカの特殊な睡眠薬で眠らされ2週間は目を覚ましません
救国軍事会議崩壊・クーデター失敗
ユリアンの回想でルドルフとアーレ・ハイネセンについて語られ、アーレは「長征1万光年」の旅路を天然ドライアイスの宇宙船で敢行、ヤンは首飾り攻略はこの氷の船の故事に倣おうとします。ヤンの各個撃破戦法を逆手に取り3方向から挟み込む作戦のグリーンヒルですが、ヤンはその案に敢えて乗っかります
すると1ダースの巨大な氷塊が突進、質量は相対性理論により223倍にもなり一気に首飾りを破壊します!これは市民にアーレを思い出せと強いメッセージを想起させ敵兵の心をも揺さぶります。2分したルグランジュ艦隊を各個撃破しヤンはグエン・バン・ヒューに側面を突くように指示、ビッテンフェルト顔負けです(笑)
今度は後方のフィッシャーにも指示し艦隊戦は完璧、看破し起きたバグダッシュを利用しハイネセン全市民を人質とされる事を避ける為グリーンヒルと通信し扇動者がいないか問い、グリーンヒルはリンチだと悟ります。ここでオーベルシュタインから通信が入り、見事帝国の掌で踊らされていた事が判明します
通信を切り激昂したグリーンヒルですが、リンチと相打ちとなり救国軍事会議は指導者を失い、ヤンは事後処理に当たり、気落ちするフレデリカは2時間だけ休み復活、激務が救いとなります。ビュコックも助け、ユリアンの元にトリューニヒトが現れ地球教徒に匿われていたようです
数日後トリューニヒトは表舞台に復活、公衆の面前でヤンは握手を求められヤンは彼を過小評価していたと悟り、したくもない握手をせざるを得ないところでこの巻は終わります
まとめ
今巻前半では本伝でも旧アニメでも簡素に描かれて来たシャンプール地上戦が華麗に描かれます。やはり薔薇の騎士の戦闘力は突出しており、地上戦で2倍の敵を何と3日で落としてしまうのですから大したものです。昨今の戦争を想起させる描写でしたが、如何に一般市民に火の手が向かないようにするか苦心されています
藤崎竜版ではこういった戦闘の局面を深掘りしたマニアにはたまらない緻密な筆致が魅力で、近代戦闘の妙が堪能出来ます。勿論戦争はない方が好ましいですが、例えばキングダムのような中国歴史ものの戦闘シーンのそれとは全く異なった戦術・近代兵器の登場でその差別化が上手くなされています
バグダッシュという刺客がヤン暗殺に送り込まれますが、逆に利用しアルテミスの首飾り・ルグランジュ艦隊を撃破し、丸裸となった救国軍事会議、恐れるのはハイネセンの市民の人質でしたが、聡明なグリーンヒルは流石にその手を打ちませんでした。ヤン・フレデリカにとっては大切な人を失い傷心でしょうが気丈です
結果的に帝国内乱に乗じたオーベル~の掌で踊らされていた訳ですが、傷つかずむしろ勢いを増したトリューニヒトには寒気がする程です。今後も彼はその奇怪な世渡り術を発揮しこの物語に何時迄も居座る事になりますので要チェックです…15巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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