前回までのあらすじ
ミッターマイヤーは「疾風ウォルフ」と呼ばれる艦隊運用で帝国軍最速の艦隊教義が彼の戦い方です。両翼に加えビッテンフェルトを魁としたこの布陣に隙は無く、パエッタはレグニッツァの雲に向かいゲリラ戦の構え、本来なら退き時ですがミュッケンベルガーの手前敢えてラインハルトが死地に飛び込みます…

第4次ティアマト会戦=英雄の誕生
風は時速2000キロを超え荒れに荒れたレグニッツァでヤンは父の言葉を思い出しラップにあるお願いをします。それは巨大ガス惑星に火を付けたら大爆発に飲まれる事で、パエッタはやっと進言を取り入れ撤退を指示、ところがレーザー核融合ミサイルが帝国軍より撃ち込まれ大爆発、8割消滅です
ラインハルトは残敵を掃討せずイゼルローンに帰投、フレーゲルに意図は看破されますがそれでも彼はまだ諦めません。パエッタの報告からグリーンヒルはヤンの進言を軽視した事を悔い、彼の知略をもっと有効に活用すべきではないか?と感じます
ヤン達は無事で、ラップは次の戦場はまたティアマトだと予言、事実そこで相対し同盟:帝国の比で第4次ティアマト会戦の幕開けです。ミュッケン~の指令でラインハルト艦隊だけ前進せよとこれはフレーゲルの仕業で、ラインハルトは臆せず極端に前進、ヤンもその意図が分かりません
この奇策に下手に手が出せないロボス、ヤンは例の「危険人物」が急速に昇進し帝国軍に不和が生じていると読みます。敵の陣形が消極的なのを見て撃って来ないと予測し、ミュッケン~はラインハルトが戦争の天才だと確信します。ヤンは今歴史的瞬間に立ち会っている、英雄の誕生する瞬間を目撃しているのかもしれないと感じます
アスターテ星域会戦
結局ラインハルトは無傷で通り過ぎ、本隊同士がやっと交戦しおそまつなもので、主役が去った後ただの消化試合となります。オーディンに帰還すると多くの兵が彼を信頼しはせ参じ、ラインハルトはまだ足りぬと野望は尽きません
ラインハルトは上級大将に昇進し、ローエングラム伯爵家を継ぎ、ミュッケン~は退役します。ミューゼルの姓を捨てこんな家名下水に流したって惜しくないと2人はアンネローゼを取り戻す為に高みを目指します。12月ラインハルトを総指令とした出征で宿敵ヤンとの直接対決となるアスターテ星域会戦です
「星を見ておいでですか?」「ああ、星はいい」という名台詞も飛び出し、ここから旧アニメ本伝に繋がります。ラインハルトに対し同盟は倍の4万隻で三方向から取り囲む陣形を取っています…ダゴン殲滅戦の再現を狙っているのです。今回双璧とビッテンフェルトは外され5提督の厄介者を付けられフレーゲルの仕業です
エルラッハ・ファーレンハイト・シュターデン・フォーゲル・メルカッツと個性派揃いでまとまらず、ラインハルトは撤退などしない、窮地ではなく勝利の好機にしか見えぬと不敵です。アッテンボローにヤンはわが軍が全滅する態勢にしか見えないと嘆きます
物凄い妨害電波でレーダーが役に立たず、トリューニヒトは敢えてパエッタ・パストーレ・ムーアを競わせ総司令を決めませんでした。ヤンの作戦案をパエッタは却下、頼みのラップもムーアに臆病者と罵られ、ヤンは各個撃破の三連戦で全滅する未来しか見えません
2人の主人公、ついに相対す!
まずパストーレが餌食となりファーレンハイトはラインハルトを認めます。メルカッツも智将と呼び猛将と言うとシュナイダーを諭し高評価です。残敵掃討は無用で次の戦場に向かい、数の少ないムーアに狙いを定め4時間弱で着くとキルヒアイスはもう計算しています
ラップ必死の進言も受け入れられず営倉に放り込まれ惑星テルヌーゼンのジェシカは嫌な予感がします。ヤンは渋々上申し、ムーアと合流するよう進言しますがパエッタは功を焦っており個人プレーに走ります。ムーアに決死の進言をするラップ、そこにラインハルト艦隊が現れムーアの首が飛びます!
ラップはジェシカを想いながら逝き、ラインハルトは2人を気に入ります。これで残るはパエッタのみ、勝利は確定しています…妨害電波が晴れ、2艦隊が殲滅された後でヤンはダメな歌を歌い(笑)最後の悪あがきをします。旗艦パトロクロスが被弾、パエッタは負傷しヤンに指揮権が移ります
ヤンは全艦に向けて通信を送り、ラインハルトにもその名が聞こえついに表舞台に姿を現した!と身震いします。エル・ファシルの英雄としてその弁舌は明快で、士気が上がり当面は各個撃破に専念させます。ラインハルトは手応えのありそうな敵を目前にして高揚しています
負けはしないと言われラインハルトはファーレンハイトを先頭に超攻撃型紡錘陣形を取り中央突破を図る気です。ヤンは冷静に全艦に戦術コンピュータのC4というフォルダを開かせ、歴史を学んだヤンは勝つ事が出来ないなら「負けない戦い方」で挑むと宣言するところでこの巻は終わります
まとめ
藤崎竜版の優れている点はこの巻まで本伝から寄り道し今まで描かれなかった視点から物語を紡いだ点にあります。特に旧アニメではいきなり今巻のアスターテ星域会戦から始まる為、ラインハルトがこんなに苦労して今の地位を築いたのか…と納得の行く物語とした点が秀逸です
そして原作ファン誰もが思う銀英伝の最大の魅力は全くキャラクターの異なる2人の主人公の対比です。美麗で若く豪胆で戦争の天才のラインハルトに対し、民主共和制の同盟の軍人であるヤンはどこか頼りなく覇気に欠けますが、今後その頭脳明晰ぶりを発揮し良きライバルとして切磋琢磨します
強烈なラインハルトという光に目を奪われがちながら、どこか素朴なヤンに惹かれる人も多く、まるでガンダムの連邦とジオン軍のように敵味方というよりどちらも応援したくなる構図は今までに無かった新鮮さがありました。特に専制君主制と民主共和制という対比設定も素晴らしい着眼点です
戦争の天才と言われるラインハルトに挑むヤン、「負けない戦い方」は出来るとこちらも狡猾に手は打っており、ラインハルトの中央突破を如何に掻い潜るか興味が湧きます…7巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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