「火ノ丸相撲」21巻の数々の激戦と成長譚~番付け至上主義の蜻蛉切の横暴で薫丸負傷…「花相撲」のはずの地方巡業が一変殺気立った雰囲気に!鬼丸本気の敵討ち~

前回までのあらすじ

強い鬼丸に我先に次の相手を申し込む猛者達、猛稽古を積みますがお互いライバルであり本場所前に手の内全てをさらけ出す気はないのです。鬼丸レイナに電話でお互いの近況報告をし、レイナが苛烈を極める稽古から刃皇の他に大包平おおかねひら関にも気を付けた方が良いと助言します…

薫丸の悲劇

水をかけられ気を取り戻した大包平おおかねひら、またも横綱には勝てず終いです。唐揚げ作りの名人の大包平おおかねひらは栄大出身で同大のレイナとは面識があり、相撲以外の場面では子供っぽい一面も見せる刃皇を上手く操縦します。父の跡を継ぎ白楼の監督になるはずが、周りの熱に感化され負けたくないと力士となったのです

岐阜合宿五日目、地元の薫丸が人気な中、天下三名槍の蜻蛉切とんぼきりが現れ天下五剣が裏山で体力トレーニングしていると鬼切が告げ、薫丸が相手する事になります。すると思いのほかしぶといのが気に食わなかったのか勝負が決まった後に駄目押ししたように見え薫丸は右膝を負傷します

蜻蛉切とんぼきりは悪い意味で大相撲に染まってしまった男で、番付至上主義で下の者への横暴は目に余ります。事情を聞いた鬼丸が急ぐ中あの場に腕っぷしで蜻蛉切とんぼきりを黙らせる事が出来る者はいません。すると太郎太刀小関が怒り立ち塞がります

白狼バトが吹っ飛ばされる中、太郎太刀が相手しますが荒っぽい蜻蛉切とんぼきりの相撲は確かな鍛錬の跡が見え、かいなぢから起重機クレーンのように吊り出しー起重進撃を見せますが太郎太刀は引き付け重心をずらし簡単に吊らせません。太郎太刀の実力を認めた蜻蛉切とんぼきりはカラっと切り替わり優しさを見せます

鬼丸が到着し誰が未熟者じゃったのかわかるよなあ?と凄むと蜻蛉切とんぼきりは若くて才能がある俺達が主役の新しい時代を作りましょうと大関に伝えといてと言い去ります。この件で合宿は打ち切りとなり、ある程度の成果は感じつつ薫丸への仕打ちを憎む白狼は泣いて蜻蛉切とんぼきりへの敵討ちを鬼丸に託します

殺気立つ地方巡業

八月、地方巡業でレイナ達も見守る中鬼丸含め巡業らしからぬ心地良い殺気を感じ刃皇は機嫌が良いです。地方巡業は所謂「花相撲」で本場所程張り詰めてはいないものですが先日の刃皇の発言もあり殺気立っています。恒例の握手会・子供達との稽古・幕下以下の取組を挟んで相撲甚句じんくでは美声が披露されます

御手杵おてぎね関に加え太郎太刀は歌が上手く盛り上がります。初切しょっきりでコミカルな演技と合わせて相撲の禁じ手を紹介し、櫓太鼓打分やぐらだいこうちわけ髪結かみゆい実演も挟み、地元の薫丸の姿はなく、ケガで来場所どころか手術しても復帰できるか微妙で、休場してる間も番付は下がり続け、12年掛けて少しずつ上げて来たものも年齢的にも厳しい現実です

柴木山部屋勢が殺気立つ中今日の割は蜻蛉切とんぼきり鬼丸なのです!鬼丸は故意ではなかったと認めつつ丸さんの真剣さを受け止めるだけの器がなかったとさげすみ、花相撲で小兵のワシに負けたらさぞ悔しかろうなぁと煽ります。冴ノ山鬼丸の真意を悟り、力を持つからこそ誰より強く己を律し続ける「品格」について感じ入ります

本気の鬼丸に真面目にやんのも馬鹿らしいと蹴手繰けたぐりで真っ向勝負を避けると鬼丸の残しての焼けばちに対しまた気が変わった蜻蛉切とんぼきりは強い張り手を見せます。鬼丸は何でこんな品の無ぇ奴がこんなに強ぇんじゃと気に食わず、起重鉄球モンケーンのような張り手に苦戦します

薫丸同様壊してやろうとする蜻蛉切とんぼきりに突き押し得意の鬼丸は回転数が上がり、薫丸の才能がなくとも諦めず愚直に12年も努力し続けた姿が憑依し、組みに来た蜻蛉切とんぼきりに蹴返しで鬼丸は完全にキレています。勝手に負けようとする蜻蛉切とんぼきり鬼丸修羅の相・無道で死ぬ覚悟もねぇ奴が土俵に上がってんじゃねぇよと無理矢理引き起こします

鬼丸に煽られたぎる童子切

流石に蜻蛉切とんぼきりもキレかち上げから四つで必勝パターンで吊ると吊り落としで叩きつけようとしますが鬼丸は堪えます。ワシはてめぇを否定すると逆一本背負いー裏・無刀一輪で意表を突かれやっと真剣本気になったところで完全に後ろを取り吊り上げると殺されると感じた蜻蛉切とんぼきりを他所に鬼丸は優しく吊り出し恥じる事ない相撲道を見せます

刃皇はあれだけの殺意を受け止めるだけの覚悟を皆に強いるのは酷な話だとその重すぎる’’愛’’に応えられる者がいるかと思案します。レイナは命に替えても欲しいものがあるあんたに私は何をしてあげられる?と青ざめます。鬼丸蜻蛉切とんぼきりの取組は観る者に様々な感情を抱かせます

煽られ特に若手の「国宝世代」の気合いが半端なく大典太・大和号と続きます。大包平おおかねひら三日月が勝ち、長い相撲で冴ノ山を打っちゃ御手杵おてぎねも誰かさんのせいで拍子が狂うと高ぶります。結びの一番は童子切刃皇です。刃皇は自分のところに来いとスカウトした経緯もあり童子切に期待しています

童子切の人気は群を抜き、そのサービス精神やマスコミ受けの良さ、リーダーシップ等からみんなの横綱ピープルズチャンプになれると刃皇も認め、どうしてあと数年早く俺の前に現れてくれなかったんだと嘆きます。童子切も本割りで刃皇に勝った事はなく、巡業ながら鬼丸の作ったこの空気に刃皇も半端な相撲は取れません

童子切刃皇を真似「後の先」で待ちますが、刃皇は激しく移り変わる喜怒哀楽で取り口そのものは王道ながら読めない脈絡のない相撲はまるで何人もの力士を同時に相手しとる気分やと童子切は防戦一方です。ところがこれは童子切が望んだ展開でもあり、全ての顔に勝ってやると気張ります

全部を相手するのは無理だと悟った童子切が数センチ単位で廻しを引く位置を探ってそれが気に食わない刃皇が鬼の形相となり童子切がその顔を待ってたんやとたぎるところでこの巻は終わります

まとめ

今巻では様々な感情が去来する印象深い巻となります。特に地道に愚直に努力を重ねて来た薫丸がよりによって地元凱旋の合宿で蜻蛉切とんぼきりにやられ負傷するくだりは相撲界の様々な側面を感じさせます。ワザとケガをさせたようにも見え、蜻蛉切とんぼきりの番付至上主義の横暴な態度は非常に後味が悪いです

相撲界では経験・年齢に関係なく番付が上であれば絶対という慣習があり、蜻蛉切とんぼきりのように様々な顔を見せる嫌な力士もいるのかもしれません。勝負の世界ですから当然遊びではなく、強者が絶対な中、力士・特に横綱を目指す者はその「品格」すら問われるのです

力士は強さと共に相手を思いやる優しさも持っていなければなりません。今回地方巡業という「花相撲」で鬼の形相を見せる鬼丸は同部屋の薫丸の仇と蜻蛉切とんぼきりと殺気立った取組を見せ、結果的に他の力士も感化されます。ぬるいと感じていた刃皇にすら飛び火し、童子切たぎっています

このように鬼丸は未だ命懸けの危うい相撲を取り、レイナも青ざめる程です…この危うさこそが鬼丸の持ち味でもありますが、小兵故にケガ等も心配です。駿海との約束もある中、22巻ではどんなお話が待っているでしょうか?

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