前回までのあらすじ
童子切は刃皇を真似「後の先」で待ちますが、刃皇は激しく移り変わる喜怒哀楽で取り口そのものは王道ながら読めない脈絡のない相撲はまるで何人もの力士を同時に相手しとる気分やと童子切は防戦一方です。ところがこれは童子切が望んだ展開でもあり、全ての顔に勝ってやると気張ります
全部を相手するのは無理だと悟った童子切が数センチ単位で廻しを引く位置を探ってそれが気に食わない刃皇が鬼の形相となり童子切がその顔を待ってたんやと滾ります…

死にたがりの鬼丸
持たれて嫌なポイントを見つけ顔を一つに絞る童子切、横綱の逆鱗に触れ憤懣の相で形も構わず強引に攻められます。皆この怒涛の攻めに呑まれて終わる中、童子切は自分ならこの攻めを耐え切れると踏んでおり、相手に合わせてより良い形を取るー童子切の「横綱相撲」です
すると刃皇は憤懣の相と静謐の相で粗暴且つ泰然であり、やればやる程強くなる俺を見たないんか?と童子切善戦も軍配は刃皇です。刃皇は巡業とて一勝たりともくれてやるつもりはねぇと凄みます。休む暇なく巡業は続き1か月で20か所近くも回らなければならない過酷な旅です
鬼丸は親方から事実上の謹慎を食らい、薫丸を見舞い彼の不屈の闘志に喜びます。すると親方が話があるとし、なんと「お見合い」を提案、鬼丸はレイナが彼女だと告げ親方はその子が土俵の外での「生きる理由」になってくれたら…と願います
今場所どうしても優勝したい鬼丸はもう少し待っててくれんかと請い、レイナは見届けると言いつつ自分は幸せにはなれないみたいな事言わないでと心揺れます。レイナが恋愛上級者達に教えを乞うと結婚しちゃえば?とスッパリです(笑)その後検査の結果にも異状はなく鬼丸は巡業に復帰します
巡業自体も過剰な熱は一旦静まる中、刃皇だけは一度も負ける事はありませんでした。無事終わり番付発表で鬼丸は西前頭三枚目となり、上位陣と総当たりとなる地位です。部屋総出で後援者に配る為の番付表を折るのが慣習です。そんな中免許取り立てのレイナの運転で鬼丸は母の墓に番付表を届けに行きます
流れで母方の祖父母の家に行き、レイナは思い切って泊って行こうと提案し楽しい時を過ごします。レイナは鬼丸の味方ですが、今の死にたがりのあんたの背中を私は押せないよ…と葛藤します。祖母はレイナが鬼丸の母に似ているとし、DVDを渡してきます
九月場所初日:対大典太戦
ー数日後名塚は敢えて鬼丸がインタビューを受けてた番組が始まる時間に取材しに来ます。鬼丸・冴ノ山の柴木山部屋勢は無難にまとめ若干固い受け答えです。一方童子切は刃皇を止めるのはこの俺だと宣言します。大般若と三日月も続き、大和国部屋では大和号が手堅く締めます
すると草薙がもし今場所刃皇に勝って優勝したら「大和国」の四股名を僕にくださいと覚悟を見せます。そんな他力士のインタビューを見て刃皇会議が始まります。様々な顔を持つ刃皇はそこに愛はあるのかい?と問い相撲への深い愛を語ります。鬼丸もワシの愛を受け止めて下さいよと滾ります
ー九月場所が開幕し、「土俵祭」「触れ太鼓」を行い呼出達が各部屋を訪れ鬼丸の初日は大典太です。大典太もインタビュー映像を見て以前刃皇から兄の事で蔑まれ頭にきているのです。鬼丸と大典太の間には友情があり、公式戦での初顔合わせに全力でぶつけ合おうと約束します
ー満員御礼の国技館、二人の身長差は47cmです!雷神対鬼神、待ったなしで事情を知る解説の大和国は激しい打撃戦になると予想します。その通り諸手で上体を起こしにかかる大典太に対し鬼丸は鬼炎万丈 打突の型「焼け撥」を放ち、大典太は「雷帝の相」「万雷」で予想を遥かに越えた超打撃戦となります
鬼の形相の鬼丸は土俵際追い詰められますが、俵に足を固定し受けに専念し持久戦です。死んでもそこをどかねぇってのかよ!と思わせる程の覚悟を見せる鬼丸、とても15日間戦い抜けるとは思えない全力です。レイナも勝たせてあげてよと願います
力士寿命の短さを自覚している鬼丸
大典太は禁断の右下手からの投げを打ってくる可能性が拭えず、殺す気で来いという鬼丸に強烈な張り手を食らわしながら互いに廻しを引きます。先に鬼丸が左下手捻りー鬼嵐で揺さぶり、今度は大逆手で大典太がやり返します。一気の寄りも鬼丸意地で残します
決め手がないまま4分が経過する「大相撲」となり、まさかの水入りです。国技館には32場所分の優勝額が飾られ、その中に日本人力士の姿はありません。同じ位置から再開となり、大典太が纏う目映い光に対し鬼丸はどす黒い炎を燃やします
刃皇脳内で様々な顔が値踏みする中、大典太は大景勝直伝ー大車輪上手投げを放ち鬼丸何とか残し、大器として期待される大典太に対し鬼丸は俵を使って脱出する往生際の悪さです。大典太の鋭い突きを食らい力士寿命が短いと自覚している鬼丸が土壇場で首投げー奈落連を放つところでこの巻は終わります
まとめ
地方巡業が一変殺気立ったものとなり、観客にしたら本気の相撲を見せられ熱いでしょうが、やはり刃皇の優勝したら引退宣言が事の発端でもあり、特に若手が滾るのも当然です。退屈を感じていた刃皇にしたら却って願っても見ない展開ですが、それでも横綱一強に変わりありません
死にたがりの鬼丸を何とかしたい親方やレイナの献身虚しく、現時点で火の玉になっている鬼丸を止める術はありません。大典太との初日は苛烈極めるものとなり、4分を越える「大相撲」となります。一場所15日間の長丁場ですから、ペース配分等も本来なら必要でしょう
ところが特に今場所に懸ける意気込みが違う鬼丸は自身の力士寿命が短いと自覚しながら正に一番一番を本気の真剣勝負で取り組む気です。長い九月場所の初日でこれですから、鬼丸の苛烈さと死にたがりが気にかかる中、23巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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