前回までのあらすじ
飛騨からくり屋敷殺人事件…愚者を装っていた隼人がまた毒を盛ったねと迫り、それでも紫乃は自身が盛ったと庇い逝きます。倫太郎に金田一は柊家の子孫で紫乃の嬰児交換を見過ごしたのでは?と問い、隼人と環は駆け落ち、「母の愛」と男女の愛を比べる剣持が感じ入ると妻が現れ無理矢理金田一のせいにされタジタジです…
まさかの金田一が犯人⁉
ポケベルで呼び出された金田一にいつき陽介と鴨下あきらが暗号の解読を依頼します。橘五柳の新作の出版権が懸かっており、別荘に赴くと都築哲雄が橘に食い下がっています。金田一耕助の孫と知っており、名を汚さぬように頑張れと強気です。大村紺・針生聖典もおりいつきと懇意の中です
2人を時任亘が宥めパーティーが始まり、司会は桂横平です。そこに死んだはずの佐木がおり、実は弟の竜二で父の助手で来ていたのです。お待ちかねの推理ゲームとなり、原稿はある社会悪を暴いたノンフィクションでパーティーの参加者が実名で出ていると凄みます
暗号が発表され金田一は一発で見抜いてしまいます。ある変換法則で「秋」が「イカ」になっちゃうが意味は変わらないと…皆見当外れな所を必死で探しますが金田一はゴージャスバカンスが終わっちゃうと呑気です。野中ともみが橘のテーブルの下に潜り込み色仕掛けしますが何か尋ねられたら「私で終わりよ」と言えと…
花村葵・棗姉妹が対照的な双子な中、橘のスケベ癖が止まらず金田一は橘の秘密を掴み公衆の面前でハゲだとバラしてしまい怒りを買います。鴨下に謝りに行くよう言われるも遅いので佐木と棗が様子を見に行くと橘が金田一に殴り殺されており長島滋が尋問します
佐木のビデオから足跡は一組しかなく菊の電話で10時まで生きていた事も分かり金田一は逮捕されます。護送中金田一は巧みにトイレから脱出し身の潔白を証明する為美雪にポケベルで連絡します。いつきは関係者に頼み込み協力態勢を整え、電話で大村がいるか問う金田一はトラックに乗り込み東京に向かいます
例の暗号の答えが「大村に聞けばわかる」で電話で問い大村は「時任に聞けばわかる」と答えると撲殺され、現場に向かうとパトカーが来て金田一はハメられています。何とか脱出しますが指紋を残し金田一犯人の線は色濃くなってしまいます
金田一が明智に撃たれ…
再度電話でいつきから医学界と密輸が絡んだ新作らしいと情報を得た金田一は時任に会いに行きますが、今度は「桂に聞けばわかる」と言われ時任も殺され犯人共々後を追う他ありません。ところが明智登場で油断ならず、早速ビデオテープのワナに掛かりうさぎ狩りとなります
金田一は巧みにテープを回収しますが発信機が付いており逃げられず、都築に匿われビデオで違和感を感じます。金田一は美雪の誕生日を忘れていなくポケベルでケーキを渡し律儀です。桂の楽屋に赴くと明智もおり、金田一は桂に接触し「野中に聞けばわかる」と言われ今度は桂まで殺されます!
針生に匿われ別荘の設計図のコピーを借り電車で逃げるとドアに銃が挟まったドジな警官がおり、金田一が助け長島に追われ川に飛び込み葵に助けられます。「カギの束」と「耳の遠いおばあちゃん」というキーワードを掴みこの「伝言ゲーム」には別の意図が隠されているかもしれないと…
写真で死体をどけたあとにガラスのかけらがなかった事から犯人は橘を殺した後水槽を割ったと勘付き、棗も帰って来てしまい湯ノ沢ホテルに役者が揃います。いつき名義の手紙で呼び出された野中を発見した金田一が問うと「私で終わりよ」と言われ新聞から重要なのはメッセージの内容じゃない事に気付きます
野中も殺され身近に犯人が居ると悟った金田一は暗号を残し、追い詰められた金田一は凶悪犯の制圧はこうやるんですよと何と明智に撃たれてしまいます!銃で左胸を撃たれ金田一は救急車で運ばれます
金田一を陥れた犯人の正体と動機は⁉
明智は人殺し出来るタマじゃなく人をだます事はしてもねと金田一は生きており、実は空砲を撃っただけだったのです。トマトジュースで血を偽り完全に皆を騙した金田一、ポケベルの暗号を明智に託していました。現場検証し金田一は違和感の理由を悟り犯人に目星を付けます
脱出トリックに悩むもエアコンを誤って付けてしまった事から一本に繋がり謎はすべて解けた…と確信します。「見えざる敵」を誘き出し動機は橘の原稿で伝言ゲームはその順番こそが答えで「オオトケイノナカ」から「大時計の中」と看破しフロッピーディスクが見つかります
大々的に報道されている為、この暗号を万人に解かれる可能性もあり犯人は焦って出て来てしまったのです。金田一は犯人がいつきのところに居たから筒抜けだったとし、ついに都築だと暴きます。橘を殺した際足跡を残さず書斎から逃げるなんて絶対不可能と強気ですが、金田一は「見えない道」があるとします
金田一はドアが「見えない道」でカギ束で次々とドアを開けドア越しに乗り移って移動、しかし本館に行くには距離があります。菊にわざわざ電話を掛けたのはドアを開けさせる為で「架け橋」となり、証拠もうっかり壊したメガネから水槽を割って誤魔化した事を指摘します
まだ認めない都築に掛け替えたメガネが老眼鏡で近視用メガネとは用途によって使い分けるもので代用なんて出来っこないと追い詰め、ついに都築は自供、瑞穂の為だと明かします。重度の腎障害で都築は移植しますが手術は失敗、前田から臓器密輸の手伝いをさせられます
その事を暴かれそうになり橘を殺したのです…都築は自害しもう一つの腎臓を移植してくれと請い、数か月後遺作「臓器密輸」は音羽出版から刊行され大ヒット、瑞穂も元気になりいつきは彼女を引き取ろうと漢気を見せ、美雪は「ハッピーバースデー」と書かれたポケベルの文字を消したくないところでこの巻は終わります
まとめ
凝り固まったパターン脱却の意味でも今巻の成す意味は大きいです。今回金田一が犯人にハメられ逃避行を繰り返す展開は大きな話題を呼び、新境地として受け入れられました。暗号の謎も含め読者に犯人や動機について考えさせる作風は流石の一言です
犯人の都築は瑞穂の重い腎障害に悩んでおり、臓器密輸という悪事に手を染めてしまいます。この事を告発すると橘に脅され凶行に及ぶ訳ですが、こういったスクープから恨みを買うケースも多々あり昨今の週刊誌のスクープ合戦には辟易してしまいます
当時の最新トレンドとしてポケベルが上手く活用されており、時代の変遷と共に懐古厨にはたまらない仕掛けです。今ではメールもLINEもお手軽、苦労して文字を打ち込むポケベルのアナログ感が美雪にとってはかけがえのないバースデープレゼントとなりました…11巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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