前回までのあらすじ
金田一少年の殺人…臓器密輸が暴かれそうになり橘を殺したのです…都築は自害しもう一つの腎臓を移植してくれと請い、数か月後遺作「臓器密輸」は音羽出版から刊行され大ヒット、瑞穂も元気になりいつきは彼女を引き取ろうと漢気を見せ、美雪は「ハッピーバースデー」と書かれたポケベルの文字を消したくないです…
またもや新展開!犯人が丸わかり!
速水玲香の誘いで青森県の高巻スキー場に赴く金田一、ペンションには赤間光彦・小城拓也・滝下間太郎も同行、速水雄一郎は伊丹吾郎・北条アンヌに食い下がられ失踪騒ぎもどこ吹く風と玲香は金田一に抱き着きます!帰りのロープウェイも去り全員泊まる事になり諏訪正子は荷物を担ぎパワフルです
伊丹は足を引きずる雄一郎を知っている風です。結城英作と久しぶりに再会し、玲香が風呂に入ると怪人が出現、それはスキー客で遭難した辻健二でした。辻にリフトについて語る雄一郎、朝8時~夕方5時までしか動かないのです。発電用の風車山の風車は冬の間凍って動きません
結城も知っている伊丹は唐突に3つの凄惨な事件について語り出し、雄一郎にワザと聞かせている風です。伊丹は雄一郎を脅し1億を半額にまけて玲香を抱かせろと迫り雄一郎は激昂、灰皿で叩いて殺してしまいます!結城のタロット談義が尽きぬ中、雄一郎は死体の処分に必死です
指紋を拭き取り灰皿の灰も掃除、証拠隠滅しますが翌朝タロットカードが全て無くなり伊丹の部屋に「運命の輪」が張られています。風車山に赴くと風車に伊丹が貼り付けになって死んでいます!金田一は明晰な頭脳で名推理を展開、アリバイを洗いますが電話線が切られ山荘に閉じ込められます
小城は滝下を見たと言いロープウェイを壊したのは彼で玲香と少しでも一緒に居たいからでした。アリバイは結城の解剖から金田一以外白となり振り出しです。現場検証し金田一は突発的な犯行で2つの痕跡からここで殺され犯人によって運ばれたとします
「陰の脅迫者」に殺された雄一郎
セーターを着ておらず、灰皿の灰がない事から掃除機で掃除しその為時計がズレていると指摘、雄一郎は焦りますがまだ解けない部分もあります。金田一はワザとヘッドホンを落とし雄一郎にテープレコーダーを探させ犯人の目星がついたと迫ります
雄一郎は金田一を絞殺しようとして玲香に見つかり止め、彼女にマフラーを巻くと異様に嫌がり雄一郎は死体を運んだか分かれば犯人として告発されると気が気でありません。雄一郎に死体を風車山に運んだ人物から電話があり平穏な生活を守る為に風呂に入る赤間を感電死させます
停電になり悲鳴の方に向かうと雄一郎は「赤間さん?」と特定しており「落雷の塔」は「予期せぬ災い」でまた「見立て」殺人です。金田一は何故赤間だと分かったのか?、左右違うスリッパを履いているのか?問い明らかに雄一郎の犯行だと気付いています
結城はタロットが「正位置」と「逆位置」で違う意味を持つと語り、玲香は北条と小城の密談を聞いてしまい5000万の借金の事は雄一郎に言っていないとしこれでは動機があやふやです。真犯人は雄一郎から結城に暖炉の火の番を頼み時間まで部屋から一歩も出ないで今度は私がもう1人殺すと…
それは金田一で妙な眠気に襲われ金田一は自室で寝入りその後死体が見つかりますが、金田一でなく雄一郎が首を吊っており「吊るされた男」ですがカードが不自然です。金田一は伊丹・赤間殺しは雄一郎の仕業だと断定しますが動機について例の凄惨な事件が関係しているとします
北条は残雪山の遭難事件・幼児2人誘拐事件・銀行強盗事件について語り、このどれかが伊丹殺しの動機となりますが、赤間が玲香の体を狙っていた事を雄一郎は知らず、「陰の脅迫者」がおりアリバイも作りタロットの見立ても本当の理由をカモフラージュする為だったと語ります
ところが結城は火の番で雄一郎の部屋に誰も訪れなかったと証明し、金田一は目星を付けつつ見取り図から思案します。玲香に正直に話し昔のアルバムを見ると不自然な点が多々あり金田一は美雪に昨夜金田一が寝た後の事を聞き出します
真犯人と玲香の悲しい過去と今
美雪は小城に告られたと言い、金田一は実地検証し美雪作のセーターが暖かいです。すると後方から殴られ気付くと風車山近くに1人にされ、このままでは凍死してしまいます。金田一が居ぬ間に部屋同士を繋ぐカギが見つかり金田一が疑われ、朦朧とする金田一は睡眠薬の件から謎はすべて解けた…と確信します
金田一は種火からセーターを燃やし何とか風車を回し山荘に帰って来ます!落ち着いてからタロットカードで占いと今回の「見立て」を「正位置」で順に並べて欲しいとします。金田一は今までの経緯を語りながらカードを捲っていき、「陰の脅迫者」は「吊るされた男」の正位置を誤認しています
雄一郎同様タロットカードの意味を知らない者の犯行で、それは小城でした!雄一郎殺害は室内からの犯行で、寝ている金田一はともかく美雪が邪魔です。ところが金田一は時間差トリックで看破しカップの片付けを美雪にさせる事でまず小城は先に美雪の部屋を通り抜けます
油断している雄一郎を殺し、今度は戻る手順ですがここでも美雪が邪魔です。美雪に掛かって来た電話は実は空き部屋から掛けたもので、階段をぐるっと回り小城の部屋に赴く隙に美雪の部屋を中から通り抜けたのです!玲香が人殺しと凄むので小城は犯行を認め、金田一は小城がネクタイを出来ないと看破します
15年前の誘拐事件で父が犯人に絞殺された件が心的外傷となり実はその犯人は雄一郎でした。その彼が玲香の父として納まっている事実が小城は許せず、伊丹殺しを巧みに利用しました。赤間殺しは玲香の体を狙っていたからで、金田一は玲香は小城の妹と指摘、全てを崩された玲香は山荘を飛び出します
雪崩が起き、スポーツ紙でも大々的に取り上げられる中、金田一と玲香は後日遊園地デートします。玲香は美雪の気持ちを確かめ今日に至り、玲香は小城を兄と呼び雪崩から助けられた、昔夢で左足をケガしたオオカミと仲良くなった事を語ります
北条は玲香の存在価値から敢えてスクープとせず、TV番組で玲香が「ライバル」へのメッセージとして「あきらめないわ」ですと宣言、美雪が勘付くところでこの巻は終わります
まとめ
前巻に続き特に本レビュー筆者お気に入りのこの2作が秀逸な点はワンパターンとはせず金田一が犯人と思わせたり、今巻のように犯人が読者に分かる形で提示し真犯人は別にいたという創意工夫でしょう。リアタイで読んでいただけにこの2作は思い出補正も含めて印象深いです
金田一少年の事件簿は基本金田一が犯人を明かすのがお決まりのパターンですが、今回雄一郎の犯行は読者に筒抜けで新しい試みでした。結果タロットの怪と真犯人=小城の暗躍で金田一も命の危機に瀕しますが、不屈の闘志+明晰な頭脳で切り抜けます
玲香も金田一にゾッコンで、美雪との三角関係が今後も物語を盛り上げてくれます。両手に花状態の金田一ですが、最終的に選ぶのはどちらなのか…この恋模様も含め極上のミステリーに酔いしれましょう…12巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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