前回までのあらすじ
魔術列車殺人事件…目玉マジック「無重力岩 天外焼消」は見事に失敗し左近寺は焼け死に、高遠は消え左近寺殺害トリックは「リン」とスポットライトからなる欠陥マジックで高遠のノートにはそのマジックは記されていなかったのです。高遠の逃亡が不気味な中、美雪に心配されブラを盗る金田一が相変わらずです…
金沢で黒死蝶と夜光蝶、更にあの東野まで…
海で美雪と玲香の間で揺れる金田一、2頭追うもの1頭も得ずで散々な中いつきから雑誌の写真で悲恋湖で死んだはずの東野を見せられます。金沢の班目紫紋は今夜幻の蝶をお披露目すると豪語し屋敷に赴くと蝶が庭で放し飼いされており、刈谷竹蔵が出迎えます
六波羅和馬もおり、紫紋の娘=るりは片目だけ緑色で父を嫌っているようです。パーティーでは山野勝巳が「依存種」といって大変貴重な蝶だと語ります。班目緑は超美人でるり同様左目だけ緑色です。紫紋は蝶お披露目の前にもう一つの愛すべき蝶たちを紹介します
揚羽に館羽、更に小野寺将之も居ます。るりの悲鳴で黒死蝶を発見、刈谷が死の予告じゃと騒ぐ中紫紋が「蝶塚」に葬らせます。問題のお披露目は夜光蝶で、幻想的な光景の中金田一は東野を見つけますが、彼は深山日影で別人のようです。るりは黒死蝶の件から死んじゃうかもしれないと涙目です
なんだかんだ館羽‐小野寺はラブラブで、3か月前に現れた深山‐揚羽もカップリングの気配です。るりが紫紋の緑への酷い仕打ちに涙し金田一が慰めると、「不死蝶」の名でオオルリシジミが張り付けられており、るりの死体が見つかります!猪川将佐は現場検証の上アリバイを調べ始めます
金田一は夜中より今朝のアリバイを調べるべきだとし、確認すると深山以外全員シロで連れて行かれ、金田一はいつきに屋敷のメンバーの経歴・過去を調べさせます。刈谷は黒死蝶の古くからの伝説を語り、美雪が見た蝶はカリマイナチウスだと小野寺は深山が遠野だと感じる金田一に本当は誰なのか気になるようです
紫紋は深山の背中の炎の蝶に見惚れています
’’25年前’’に起きた「出来事」がカギ
朝食で金田一はこの中に「不死蝶」がいると確信します。黒死蝶が館羽の元に来たので生命線を繋げようとカッターを出し緑に叱られ、揚羽は父が悲しんでいるのはるりの「死」ではないと寂しげです。緑の目を受け継いだのはるりだけで惜しい事をしたと紫紋は冷徹です
金田一はるりの着物が替わっている事に気付き、何か理由があったと感じます。夜光蝶が光る蝶の磔のように光集まっており、そこには館羽の死体があります!猪川は深山のワイシャツの第3ボタンを館羽が握っていたと疑いますが、不自然でもあり金田一とバチバチです
金田一は深山日影が本名でないと見抜き、本人は分からないと記憶喪失なのです。火傷の痕も見せ、いつきは彼を遠野だと疑いますが、金田一は動機がないとし、いつきから緑の自殺した恋人が蝶の研究をしていた事からこれが動機で’’25年前’’に起きた「出来事」がカギだとします
揚羽が風呂に入るとシドニージョウゴグモに襲われ深山に救われ一命を取りとめます。救急車に搬送される際血液型を本当はA型だと緑は必死です。深山は裸足で風呂場に入り第一発見者とはいえ「お芝居」でも流石に出来ない事です。いつきの調べで緑と紫紋の血液型から揚羽が2人の子でない事が判明します
金田一は蝶が逃げない理由を不思議がり、刈谷が蝶は嗅覚が発達した生物で夜光蝶が嫌う臭いを塀のパイプから流している事を明かします。今度は黒死蝶が紫紋に群がり片翅をもがれたオオムラサキに見立てられ左腕を切断された惨殺死体が見つかります
金田一は25年前の元凶について山野に問い、八重島大学の助教授時代研究室に須賀実がいたのです。紫紋も出資者となり接近、緑は須賀との結婚式を早めるつもりでしたが須賀は自殺、緑が紫紋に乗り換えたと噂になります。小野寺は本当は揚羽が好きだと打ち明け深山に殴られコンタクトレンズケースが落っこちます
夜光蝶=黒死蝶と判明、学名と和名からカリマイナチウスがトリックを暴くカギになりそうです。六波羅に写真を現像させ真実を悟った金田一は謎はすべて解けた…と確信し、「死体移動」の大マジックを再現すると凄みます。2人が逃げ出すと猪川に見つかり深山に逮捕状を突きつけ、金田一はアリバイ工作について語ります
致命的だった犯人の勘違い
るりの死体を運ぶトリックは「発想の逆転」で最初から蝶塚の上にあり、これはコノハチョウを枯葉の山とし麻酔が解け一斉に飛ばし出現させるトリックだと看破します。人目につきやすい場所で派手な振袖で発見を早め、死臭に群がる黒死蝶の習性を臭いで防ぎ、その臭いがまだ残っている人物=小野寺が犯人だと…
金田一は小野寺が何故敢えて和名のコノハチョウとは言わなかったのか問い、擬態の特徴を知られたくなかったのです。小野寺が緑と須賀の子だと明かし、コンタクトレンズケースから左目が緑色でカラコンしていた事も判明します。眼鏡をいつも掛けている小野寺が持っている理由はカラコンしかないと…
12年前養子になった小野寺は徹から将之に改名、須賀の遺書から緑が紫紋の奥方にちゃっかり納まっている事から復讐を決意、しかし緑は逆で紫紋に復讐する為に嫁ぎ娘を産んだと言うのです!須賀は夜光蝶のサナギを発見し緑も喜び結婚を急ぎますがいつの間にか紫紋の手柄にされており須賀は自殺に追い込まれます
「人工授精」の研究をしていた緑は須賀に協力して貰い冷凍保存した精子を受精して3人の娘を産んだのです。紫紋に対する復讐をこんな形で覆されて…と緑は泣き崩れ、小野寺は自決、緑も火に塗れ一緒に逝き、山野は実はサナギの事を出資者である紫紋に喋ってしまったと悔いります
半年後金沢で2人の結婚式があり、夜光蝶は発見者が須賀に改定されヤマトスガチウスとなります。金田一は遠野は悲恋湖で死んだとしまったく新しい人生を踏み出そうとしている2人を祝います。ブーケは美雪が貰い花婿のあてはあると意味深なところでこの巻は終わります
まとめ
今話が発売された当初話題になったのはカラー挿絵でコノハチョウが載っていた事でしょう。当時コミックスを持っていた本レビュー筆者は鮮明に覚えています。この凝ったトリックを実際の蝶の写真を載せる事で読者の興味を引く事は当時中学生だった自分には強烈な記憶として残っています
遺伝の不思議と悲しい勘違いが生んだ事件でしたが、緑の執念とも言える復讐を実の息子に勘違いされ無念も残った中、一緒に逝けた事は救いでもあったのかもしれません。最期に母さん…と抱擁して逝けて誤解もあった中小野寺は少し救われたでしょう
蝶という身近な存在まで題材にしてしまう制作陣の縦横無尽の創造性には脱帽する余りです。この発想力の豊富さが金田一少年の事件簿の長期連載を可能にし、1億部の超人気作品としたと納得です。17巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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