あらすじ
中国拳法の使い手・加藤ナルミは「自動人形(オートマータ)」と、それを破壊しようとする人間「しろがね」の関係を知るため、フランスのクローグ村にいました。
そこはかつて、謎多き錬金術師・黒衣の男と一切笑わないフランシーヌ人形率いる「オートマータ」たちのサーカス団「真夜中のサーカス」によって虐殺が行われた場所でした。
生き残った人々も「オートマータ」たちがまき散らしたゾナハ病によって永遠に死ねない苦しみにさいなまれます。
そこに現れたのが、笑い顔の仮面をつけた錬金術師・白銀でした。
白銀は村人達に尋ねます。
「生きのびて人形と男に戦いを挑むか、このまま時間とともに死んでゆくか?」
村人達は戦って復讐することを選び、白銀は「柔らかい石」という秘石を使い村の井戸の水を万能の霊薬「生命の水(アクア・ウイタエ)」に変え、村人たちに飲ませるのです。
村人たちのゾナハ病はこれによって治りました…
しかし、さまざまなものが村人たちの脳内に流れ込んできます。
おびただしい知識…言葉…技術…「自動人形(オートマータ)」の仕組みや壊し方…「オートマータ」を壊すために作られた「糸繰り人形(マリオネット)」の操り方…
そして、「自動人形(オートマータ)」に対する、深い深い憎悪の心…
それらはすべて白銀の知識、経験、意思でした。
村人たちは「生命の水」を生み出す原石でもある「柔らかい石」をひとりの少女の体内に隠し保管します。
「柔らかい石」は空気に触れると溶け続けてしまうので、拒否反応のない子供の体内に保管するしかなかったのです。
そうして村人たちは白銀…つまり「しろがね」と名乗った錬金術師の意志を引き継ぎ、個々の意思を捨て、「しろがね」と名乗り、「オートマータ」たちとの長きにわたる戦いを始めるのでした…。
ところで話の最中、「最古の4人」とよばれるオートマータのひとり・アルレッキーノが手下たちとともにナルミ達を襲撃します。
アルレッキーノは語ります。
「お前は知らないのか… 私たち自動人形(オートマータ)が、フランシーヌ様を笑わせるために、『人間』になろうとしていることを。」
なにをしても笑わないフランシーヌ人形に愛想をつかし、ものごとの主犯である謎の錬金術師・黒衣の造物主はフランシーヌのもとを去っていました。
フランシーヌは黒衣の造物主が戻ってくることを願って、自分の中に流れる「生命の水」を模した疑似体液を作り、「自動人形(オートマータ)」たちを作るのです。
「どうか私と来て… 私が笑える方法を共に見つけておくれ。」
その言葉にオートマータたちは奮い立ち、意志をもって、人間になりたいと思うのです。
そのためには「生命の水」を生み出す「柔らかい石」が必要不可欠!
しかし、「柔らかい石」は長い戦いの間に行方不明になってしまい、「しろがね」たちも「自動人形(オートマータ)」たちも「柔らかい石」を探すようになるのでした…。
①フランシーヌ人形
クローグ村の一角で、ナルミはある肖像画を発見します。
それは、「真夜中のサーカス」の団長・フランシーヌ人形の肖像画でした。
それを見たナルミは衝撃を受けます!
かすかに残る記憶の断片で…涙を流しながらこちらを見る少女…
フランシーヌ人形はナルミの知る少女しろがねにそっくりだったのです。
哀しそうな顔をしたしろがね…
とても悪いヤツには思えない…
しかしフランシーヌ人形の似姿は、どう見てもしろがねそのもの…
このことは、この後ナルミとしろがねのふたりの関係に大きな影響を及ぼすのです。
②「生命の水」とともに残された「あるるかん」
物語の冒頭から少女しろがねが相棒として使っていたマリオネット「あるるかん」ですが、白銀がクローグ村に残していったマリオネットはまさに「あるるかん」そのもの。
異なっているのは、初期の「あるるかん」には両腕がついており、少女しろがねが使っている現在の「あるるかん」は片腕がもげ、残った手で何かの片腕を握っている、というところです。
これは何を意味するのでしょう?
「あるるかん」が白銀から「しろがね」たちに託されてから、少女しろがねのもとにたどり着くまでに何の物語があったのでしょう?
これは、後々大きな伏線となります。
③「しろがね」たちが「しろがね」と名乗るわけ
ゾナハ病に苦しめられたクローグ村の人々が飲んだ「生命の水(アクア・ウイタエ)」。
それによってクローグ村の村人たちは「生命の水」を残した白銀の名を借り「しろがね」と名乗るようになりますが、それは、「生命の水」に白銀その人が溶けていたからでした。
多量の「生命の水」は全てのものを溶かしてしまう…
たとえそれが人であっても…
そして人が溶けた「生命の水」には溶けた人の意思…心が溶けており、それを飲んだ人はその心に支配されてしまうのです。
それがゆえに「しろがね」たちは個人でなくなり、みな一様に一つの意思を共有する「しろがね」と名乗るのです。
④「柔らかい石」の入れ物になった少女アンジェリーナ
万能の霊薬「生命の水」を生成する「柔らかい石」は普通の入れ物では保管できない…
なんと、人間の、しかも子どもの体内でしか保管できないのです。
そこでクローグ村で唯一生き残った少女アンジェリーナが入れ物となります。
それはアンジェリーナの母であり、最古の「しろがね」としてナルミを導くルシールにとっても苦渋の決断でした。
長きにわたり、500回以上もの戦いのおとりとなったアンジェリーナですが、18年前、死を迎えます。
その場所はなんとフランスからはるか遠く、ナルミの故郷・日本でした。
このことが意味することとはなんでしょうか?
運命の糸は複雑に絡んでいきます。
⑤「『柔らかい石』は、いい笑顔の者に…」
行方不明となった「柔らかい石」。
唯一行方を知るものが残した言葉は、「『柔らかい石』はいい笑顔の者に…」とだけ…。
謎めいた言葉に長年「しろがね」たちも「自動人形(オートマータ)」たちも行方を発見できずにいました。
しかしアルレッキーノは去り際に言い残します。
「真夜中のサーカスは… 探し方を見つけたぞ!」
物語は「柔らかい石」を中心に大きく動いていくのです。
次回予告
舞台は、ローエンシュタイン公国という、フランスとスイスの間に位置する小国に移ります。
そこの公女・エリの体内に「柔らかい石」があるかもしれない、というのです。
しかし当然「オートマータ」たちが邪魔をしてきます。
次回、ナルミがローエンシュタイン公国で大暴れ!
お楽しみに!
コメント