あらすじ
万能の霊薬「生命の水(アクア・ウイタエ)」を生成するために欠かせない「柔らかい石」を探して、ナルミ・ギイ・ルシールの三人はローエンシュタイン公国にやってきました。
そこで、公国の公女・エリの誘拐事件に巻き込まれてしまいます!
犯人はアプ・チャーという「自動人形(オートマータ)」。
「柔らかい石」がエリの体内にあるかもしれない、というのです。
ナルミの活躍によりエリは無事に救出され、一行は町に身を潜めますが、エリは人間味のない笑顔で言います。
「どうもありがとう。あなたの活躍は無駄でした。」
エリは、自分の気持ちを内に深く押し込めており、「自分」というものを見失っていたのです。
ルシールとギイが行った検査によると、エリの体内には「柔らかい石」などありませんでした。
しかし、それを知らないアプ・チャーやその背後にいる黒幕・ギュンター公がいつエリを襲うかわかりません。
ところで人間味のない笑顔で「生きていたくない」と言うエリや、エリをただの「柔らかい石」の入れ物としてしか扱わないギイやルシールに対してナルミは憤慨し、ひとり町に繰り出していました。
そこへ、検査を終えたエリがやってきます。
エリは子どもたちに、
「この人は公女様じゃないよ」
「エリ様はもっとお人形みたいだもん」
と言われ、当惑します。
一方のナルミは町中で拳法を披露し、人だかりの中心にいました。
ナルミの目の前に現れたエリは、美しかったロングヘア―をバッサリと切り、「私にも殴り方を教えてください。」と言います。
ナルミにこぶしの握り方を教わり、サンドバッグに渾身のパンチ!
ナルミに褒められて初めて、心から顔をほころばせるエリの笑顔は、町の人々の心をつかみます。
しかしそんな時もつかの間、エリはギュンター公の手先にさらわれてしまいます。
エリの目の前に現れたのはアプ・チャーと、エリのおじであるギュンター公。
アプ・チャーが変装を解くと、そこにはエリそっくりの女が立っているではありませんか。
身体を病んでいるギュンター公はエリの体内にある(と信じている)「柔らかい石」が欲しいと思っています。
アプ・チャーは「柔らかい石」ももちろんのことながら、エリを殺し、エリに成り代わることで人間になりたいと思っていました。
一人の人間と一体のオートマータの利害が一致し、20年近くも執念を燃やし続けていたのです。
一方で追いかけようとするナルミを、ギイやルシールは止め、それ以外にやることがある…とナルミを舞踏会へと追いやります。
ギイとルシールはギュンター公の屋敷に乗り込み、エリを助けます。
しかしギイとルシールの目的はエリを守ることではなく、オートマータの後ろにいたギュンター公の存在を暴くことだったのです。
それを知り、ギイの顔をはたくエリ。
ギイとルシールは「しろがね」特有の無表情・無感情でそれを受け入れます。
さて、舞踏会に追いやられたナルミはというと、見事エリに成り代わったアプ・チャーとダンスを踊っていました。
正体に気づかれないことにほくそ笑むアプ・チャー。
しかしそこへ、本物のエリが乗り込んできます。
アプ・チャーとエリの戦いは、エリの勝利。
街でナルミに習ったパンチを繰り出し、本物であることを証明します。
しかしそれがわかるのはエリ・ナルミ・ギイ・ルシールだけ…
一行はアプ・チャーに命じられた兵士らにより銃弾の砲火を浴びます!
ナルミとエリが顔を上げると、そこには全ての銃弾を身体で受け止めたギイとルシール、そして、アプ・チャーが。
銃弾を食らってもなお立ち続ける偽物の「公女エリ」、アプ・チャーの「人間になり変わる」という目論見はご破算になってしまったのです。
ナルミの拳によりアプ・チャーはついに倒され、ギュンター公と共に業火の中に消えていくのでした…。
①「嬉しい…」
街でナルミにパンチを習い、スパン!といい音を立ててサンドバッグを殴るエリ。
「いいスジしてるっスよ」とナルミにほめられ、顔をほころばせるエリの笑顔は、それまで「生きていたくなどありませんでした」と言っていたエリとは別人のよう。
人形のような公女様だって、思い通りにならずに怒ったり悲しんだり、そして喜んだりするんだ、と、皆が気付くシーンです。
②「踏み込みは鋭く、腰を力強く回し、肩を回して真っ直ぐ…… 打つ。」
エリが、アプ・チャーと対峙した時、「どちらが本物だ?!」と同様する周囲に対し、ナルミが言います。
「あんたら、戦ってみな。」
きっとオートマータであれば普通に戦えば勝つだろう。
ならば、戦って、勝った方が偽物だ、と。
その提案にアプ・チャーはしめた!と大喜びします。
このアプ・チャーがそんな失態を犯すはずがない!…と…
しかし、エリはナルミに戦い方を習っていました。
エリは躊躇なく、アプ・チャーを殴ります。
周囲はエリを「偽物だ!」と断定しますが、ナルミは違いました。
「本物のエリさんはこっち。」
そう。
本物のエリでなければ、ナルミが教えたパンチの繰り出し方を知っているはずがなかったのです。
エリを信じたナルミと、初めて勇気を出したエリの勝利でした。
③「エリは、この方達と一緒でなければここを去らぬと… 決めました。」
エリとナルミをかばい、全身に銃弾を浴びたギイとルシール。
そのようにした理由をギイが語ります。
「僕たちはオートマータを壊すために、あなたの命を鳥の羽の如く軽く扱ったのですから。自分の命であってもこのようなものです。」
冷血無比な「しろがね」…?
いえ、そこには確固たる意志と信念をもった二人の戦士がいました。
エリは、命を賭して自分を助けてくれた二人のことを置いていくまいと、初めて父である国王に歯向かったのです。
④「人形なんかに私の場所を渡すものかっ!!」
アプ・チャーに再び立ち向かうエリ。
ナルミと出会い、経験することで、エリは変わりました。
もう人形と呼ばれていた頃のエリではありません。
人間のエリなのです。
もしこのまま死んだとしても、人間として生きて、死んでいける。
しかしアプ・チャーは人形のまま…変わることはできないのです。
「おまえに私の何がわかる!」
激昂するアプ・チャー!
エリは繰り出します。
ナルミに教わった拳を…。
そしてその拳はナルミの拳と重なり、アプ・チャーを倒すのでした…。
⑤「罰として… 私と踊りなさい…」
いつのまにか、ナルミに恋をしていたエリ。
しかしナルミの心の中にいるのは、哀しい顔をした銀髪の女…そう、しろがねです。
恥をしのんでした告白を断られたエリは、フ…と笑って、18歳の誕生日の夜、舞踏会では果たせなかった、ダンスをナルミと踊るのです。
強くなったエリはその後父王にも「市井の民をないがしろにしてはいけません!」とたしなめるまでに強くなりましたが、心の中にはずっと、ナルミがいるのでした。
次回予告
次回、舞台は再び日本へ。
マサルに再び命の危機が訪れます…!
乞うご期待!
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