『からくりサーカス』第12巻の「加藤ナルミ」の苦しみ・憤り5選|オレは下手くそな…道化だもの

あらすじ

中国拳法の使い手で、「自動人形(オートマータ)」と唯一生身で渡り合える男・加藤ナルミは、「しろがね」のギイルシールともにアメリカにいました

オートマータたちが訪れた痕跡を追っていくと、ある村の生き残りの少年がオートマータたちの姿を見たという情報にたどり着きます

その少年から情報を得るべく訪れたのが『ゾナハ病』の隔離病棟

ニコニコと笑ってナルミ達を迎える子どもたちに、ナルミはすっかりほだされてしまいます

しかし、ギイや医師たちは繰り返し「ここは地獄だ…」と漏らします

ふたを開けてみれば、医師たちは薬漬け…

自らを「新しい『しろがね』」すなわち「しろがね-O」と名乗るジョージという男は、まるで心がないかのように子どもたちにひどい尋問を行っていたのです

それを見たナルミは激怒し、彼らを軽蔑します

しかし医師が薬漬けになるのにも理由がありました

『ゾナハ病』は周囲の人間の副交感神経が優位な状態でないと発作が起きてしまうからです

ゾナハ病の患者と向き合うためには薬漬けになってでも副交感神経が優位な状態でいなければいけなかったのです

『ゾナハ病』に有効な治療法はありません

合併症で命を落とす子どももたくさんいました

毎日のように亡くなっていく子どもたち…それでも笑っていなければならない…

それこそまさに「地獄」でした

ナルミはさらに、医師からゾナハ病についてより詳しい説明を受けます

『ゾナハ病』の病状には三段階ありました

第一段階の患者は、呼吸困難と全身の痛み、時にはけいれんや意識喪失なども引き起こします

症状を緩和するには、ナルミも経験した、「他人に笑ってもらうこと」しかありません

ナルミが長いことこの第一段階で日常生活を送れたのは奇跡的な例だったのです

第二段階の患者は、第一段階によって体の防御機能が低下し、合併症状を引き起こします

ウイルスの感染やホルモンの異常、心臓などの内臓の機能障害…

ヴィルマの弟・ジムがまさにこの第二段階の合併症状によって亡くなりました

そして、第三段階

「不運にも」合併症状にかかることができず「生き延びてしまった」患者は、死ねなくなるのです

病棟の地下でナルミを待ち構えていたのは、おびただしい数のゾナハ病の子どもたち

身動きも取れず、新陳代謝もできない彼らには、ベッドも必要なく、ただ転がされているだけの状態…

あまりにひどい、とナルミは目を疑いますが、それが真実だったのです

地上に戻ったナルミは、最初にゾナハ病に罹患したクローグ村の生き残りであるルシールと話をします

ルシールは、彼女らにゾナハ病すら治す万能の霊薬『生命の水(アクア・ウイタエ)』を与えた錬金術師・白銀について語ります

白銀がつねに身に着けていた、笑い顔のマスク…

それは、白銀が、ゾナハ病の残酷さ、運命の残酷さと向き合うためには、心に仮面をかぶらないといけなかったのかもしれなかったのかもしれない…と…

そんな時、隔離病棟をオートマータの「バウルマン先生」「アムンゼルス」たちが襲撃してきます

新しい「しろがね」、「しろがね-O」のジョージが自ら前線に立ちます

ジョージは、ギイやルシールのようにマリオネットは使いませんでした

自らの衣装を鋼の鉄球に変え、恐ろしいスピードでオートマータたちを粉砕していきます

しかしバウルマンとアムンゼルスは動じません

その後ろ、病院の中では子どもたちが恐怖のあまり一斉に発作を起こしてしまいます

ナルミは医師たちとともに子どもたちの対応に追われます

しかし奮闘むなしく、子どもたちは次々に第三段階に突入してしまうのです

あんなにかわいかった子どもたち…

あんなに無邪気に笑いあった子どもたちが…

感情をなくし、顔は引きつり、発作の苦しみにあえぐ姿を前に、ナルミはあまりに無力でした

無力…

無力…

無力!

そのころ外では、ジョージがバウルマンそしてアムンゼルスと戦っていました

雑魚相手には圧倒的だったジョージの新武器

しかし、歴戦のバウルマンたちの前に、あっけなく倒されてしまいます

ナルミは、怒りに燃えていました…

柔らかい石?生命の水?そんなモンあとまわしだ!

ゾナハ病も…ゾナハ病をまき散らすオートマータたちも…病棟の子どもたちを恐怖に陥れたバウルマンたちも…許さない!!!

ナルミはひとり、オートマータたちの前に立ちはだかります

それをあざけわらうバウルマンたち

しかし、ナルミの拳法が、向かってくるオートマータたちを一体残らず粉砕します!

ナルミは、自動人形(オートマータ)たちにとっての、悪魔になったのです!

血を…血の涙を流しながら戦うナルミの前に、ついにバウルマンとアムンゼルスは破れました…

子どもたちの笑顔と引き換えに…!

血みどろで、オートマータたちを粉砕するナルミの姿は、子どもたちにとっても悪夢でしかありませんでした

ただ…助けたかっただけ…しかしその思いも、悪魔となった今では、子どもたちには届きません

しかし、それでもいい…とナルミは言います

キリなんぞなくたっていい…オレが戦うコトしかできない悪魔になったっていいんだ…オレの前でゾナハ病に呑み込まれる子どもさえ見ることがなくなれば…!

ナルミは、ルシールから、白銀のつけていた笑い顔のマスクを受け取り…身に着けました

オレは下手くそな…道化だもの。

だがな、下手な道化は、おまえらのサーカスを、粉々にしてやるぞ。

そうすればいつか…誰かが笑ってくれるかもしれないから…。

①「ここは…地獄だ…」

子どもたちと仲良くなったナルミ

しかし子どもたちは毎日毎日、櫛の歯がひとつひとつこぼれるように、閉鎖病棟の奥へ奥へと姿を消していきます

その事実を突きつけられて、地獄を痛感し、ナルミもまた絶望を味わうのです

②「人形が…人形と… …たたかってる…」

病棟で唯一『真夜中のサーカス』の姿を見た少年・トムが、ジョージとオートマータたちの戦いを見て「人形同士で戦っている」とこぼします

しろがねはオートマータの破壊のみを目的に生きる者…

個人の意思はなく、ただオートマータに対する恨みに支配され生きる者です

その本質をトムは見抜いて、「しろがね」も「人形」じゃないの…?と問いかけるのです

③「土は土に…人形は人形に… てめーらは地獄に堕ちな。」

悪魔の形相でオートマータたちを粉砕していくナルミ

その顔にはうっすらと笑みが張り付いていました

それまで優しく、命を大切にしてきたナルミが、初めてオートマータの「命」を自ら望んで狩るようになったシーンです

命を大切にすることと、オートマータを狩るために悪魔になることは、表裏一体となってしまったのです

④「オレがなんなのかも…わからねえんだよォ!!!」

自らオートマータたちの刃のなかに突っ込んでいくナルミに、バウルマンは戦慄します

『しろがね』はこんな…好んで自分の体を…痛める戦いは…しない!

しかしナルミは応えて言います

おまえらにも『しろがね』どもにもわからねえさ… オレはここに来て、なんにもできなかった! だから… だからせめて! 子供たちの痛みの、その何百分の一かでも味わってやらねえと… オレがなんなのかも… わからねえんだよ!

あれほど子どもたちに苦しんでほしくないと思っていたナルミ

その目の前で子どもたちがもがき苦しんでいる現状

ナルミにとって、耐え難い現実だったのでしょう

その形相はまるで修羅でした…

⑤「お願いだ、ゾナハ病の薬を、一日でも早く…見つけてくれ。」

笑い顔のマスクを身に着けたナルミ

病棟を去る時に、医師たちに頭を下げます

その姿はおびえていた医師たちの心を変え、子どもたちと楽しそうに遊ぶナルミのあたたかな笑顔を思い出させます

そして思いを託された医師たちは、「任せろ!」と、答えるのです

次回予告

子どもたちのだれもがおびえ、恐れた「悪魔・ナルミ」

ですが、唯一、『真夜中のサーカス』を目撃したトム少年だけは、ナルミの本当の心を理解し、ナルミに駆け寄ってナルミを抱きしめます

ありがと…ナルミ…ありがと…

その姿に、ナルミも、思わず膝から崩れ落ち、トムを抱きしめるのです…

舞台は再び日本へ移ります

仲町サーカスに待ち受ける運命とは…!

こうご期待!

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