前回までのあらすじ
武蔵は集落が死んでいく様を目の当たりにして、重い腰を上げて、旅籠に行き「助けてくれ」と頼みに行きます…
土下座をする武蔵!生きながらえた村人達…
痩せこけた武蔵はついに長岡佐渡守に食糧がないと助けを請いに行きます。武蔵は交換条件を飲みます。武蔵は米俵を持って村に帰って来ます!村は何とか生きながらえます。武蔵は弱った伊織に薄い粥を作ってやります。豊左衛門が見張りということで家に泊まり込みます
旅籠に沢庵が泊まりに来て、旧知の仲である佐渡守と武蔵の話をします。あの武蔵が土下座とは、どんな変化がと驚きます。村の衆は秀作に今後の為にも種まき、苗づくりを教えて欲しいと請います。武蔵の姿が村人を変えたのです!
村の女衆は武蔵に剣を教えてくれと言います。武蔵は豊左衛門を代わりに推しますが、女衆は逃げてしまいます。秀作の教えで種もみを植えます。豊左衛門は武蔵との立ち合いで佐渡守に剣の腕前の信用を失ったと考えています。雪辱の日のために武蔵を知ろうとします
沢庵は佐渡守に武蔵がまた強くなったのだろうと言います。次は小倉で会えるかな?と、また流浪の旅に出ます。自らがここにいる理由は、命をつなぐため、命のあるべき姿に抗わず、さすればすでに完全に自由だと…
苗は無事芽を出し、春を迎え、いよいよ田植えです!村人はもういいだろうと言いますが、秀作はまだ早いと言います。案の定寒の戻りがあり、秀作の言う通りでした。苗は赤子と同じと言います。一日でも早く田植えし、早く収穫したいのは分かるが、田植えしてしくじったら全員飢え死にだと慎重です
村の女衆は再度武蔵に剣を教えて欲しいと言います。武蔵は腕はないと思って振って下さいと言います。闘わないのに剣を振ること…そこにどんな価値があるのかと武蔵は述懐します
秀作の最期…収穫、そして、武蔵小倉へ…
蛙を食べる蛇が現れたので、ついに田植えが始まります!村人皆で下手なりに田植えを行います。しばらく変化の見られない苗を見て、武蔵は秀作に聞きに行きます。秀作は雑草を取れと言います。そして秀作は、今のうちに村を出ていけと言います。「弱い者の見えておらぬ今のうちに出ていけ、ここにいたら闘えなくなる」と言うのです。武蔵は最後まで見届けたいと村に残ります
田んぼを嵐が襲います!なんとかこの嵐を乗り越え、稲は育っていきます。豊左衛門は秀作が武蔵にいった言葉の真意を問います。秀作は植物と同じように人間にも強い弱いはあって、武蔵のような強い男が稲のようなか弱い命を生かすことをしているのが不思議で、侍とは相いれないものがあると言います。武蔵は何を考えているのでしょう?
秀作はきめ細やかな気配りで稲を見ています。世話した人間に似るのだなと言います。秀作は暑さの中で寒気がすると言って寝込みます。豊左衛門は詳細を主へ手紙で記しています。武蔵が小倉へ行くのは収穫が済んでからと期限を設け、日に日に弱っていく秀作と熱心に会話する武蔵、今まで稲にしか心を開かなかった秀作も変わったのです
「小倉で城勤め、お前の旅も終わるか、これまでどんな旅だった?どんな道程だったか」と秀作は問います。武蔵は早馬にとてつもない重荷を背負わせながら走って来たように感じます
秀作は倒れます。秀作は起き上がったかに見えましたが、それは秀作の魂で、村人は絶命した秀作に群がります。秀作を弔い、来年の種もみを絶対に守り抜くと誓った村人達。豊左衛門は「約束の時ですな、武蔵殿」と言い、武蔵が「小倉かぁ」と呟いたたところでこの巻は終わります
まとめ
あの武蔵が土下座までして食糧を分けて欲しいと請うという場面は、本当に際の際まで追い詰められていたことが分かります。常に人より自分の方が優れているという我執を放ち、頂点を目指してきた武蔵とは思えない変わりようです。飢えた村人や伊織と出逢い、武蔵は命というものを考え直し、収穫までの期間をこの村で過ごし、小倉に行くという交換条件を飲みます
変わり者で偏屈な秀作もまた、武蔵と出逢ったことで変わっていきます。自分のことしか、稲のことしか考えてこなかった秀作が村の人々や武蔵に農業のノウハウを伝えていく様は、人は一人では生きていけないということや、例え小さな力でも集団になれば大きな灯りをともすことも出来るのだと教えられているようです
結果無事収穫が行え、武蔵の農作業の旅は終わる訳ですが、剣に生きてきた武蔵がこの旅で得たものは大きく、また、この村に与えた影響も大きいでしょう。ただ強いだけではない何かを得た武蔵、ついに小次郎のいる小倉へと向かいます
2021年現在、バガボンドはこの37巻で止まってから7年が経とうとしています。小次郎との巌流島での決戦をこの空白の期間を経て、再会される可能性は限りなく0に近いでしょう。色々な意見があると思いますが、完結していなくても心に残る名作はありますし、続きがあるかもしれないと思いながら待つということも悪くはありません。思いを馳せながら、静かに待ちましょう!
終わりに
如何だったでしょうか?剣豪宮本武蔵という男の壮絶な人生、我執の強い殺気だった男がどんどん道を極め、落ち着いた男になっていく様は何か自分に重ねてみてしまった方もいることでしょう。SLAM DUNKはスポーツ漫画だったため、このバガボンドは生き死にをテーマにしたものであったこともあり、井上雄彦先生はかなり消耗しながら描いていたと思われます。また、実在の人物の話ということも足かせにはなったことでしょう。しかし、独自解釈をふんだんに取り入れ、その唯一無二の画力で凄まじい漫画を描き上げたのは事実で、後世に残る漫画となったことでしょう。聾唖の小次郎との巌流島での決闘を夢想しながら、井上先生の他の作品にも是非目を通して欲しいです!最後までご覧頂きありがとうございました
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