戦乱の時代、半人半馬の種族「人馬」は戦の道具として虐げられていた
赤毛の大漢・松風は次の世代を生かす為に戦火に散り、その意志を託された俊足の白馬・小雲雀は山岳に逃げ延び、松風の子・権田とともに子世代を育て上げた
小雲雀が天寿を全うした後、小雲雀の子・谷風は山を去り、人里へと下りていった
『人馬』3巻のカッコいいシーン・ベスト3!3位「父さんがいつも言ってたんだ 人間を知らなければこれほど山を…命を愛せただろうかって 僕は帰らない この目で見て人間を知るまで 帰れない」
谷風が山を下っていると、野生の熊に襲われる
そこに助けに割って入ったのは山を下ることを最後まで反対していた権田だった
権田は先の戦乱期に戦闘に巻き込まれ左目を失っており、人間に対して強い憎しみと恐怖を抱いていたため、谷風が山を下ることに反対していたのである
熊へ矢を射かけてとどめを刺したのは戦中権田を保護し松風や小雲雀らと心を通わせた三国であった
谷風の下山を強く反対する権田に対し三国は谷風に着いていくと言う
その理由が、松風が命を落とした最後の戦いの後、老翁に拾われ、つかの間の時を過ごしたことにあった
三国は家族を人間に殺されたが、三国を保護した老翁は人馬に家族を殺されていた
三国は人間を憎み忌み嫌っていたが、その老翁は人馬を憎んではいなかったし、それどころか人間を嫌い、隠遁生活を送っていたのだ
その話を聞いて、谷風が言ったのがこのセリフであった
2位「知りたい 俺は この時代を知りたい」
結局一行は、谷風、三国、権田の三人で人里に下りることになった
往来を行く人間たちを見て、権田の足はすくむ
人馬と人間たちがともに同じ釜の飯を食べ、談笑し、支え合って生きている姿を見て、大きな戸惑いを感じる
身体に染みついたあの時代の恐怖が、人間への恐怖が権田を混乱させた
だが、権田は心に決めた
戦が過ぎ去り、当時の傷が忘れられた時代で、人間のことを見、聞いて、よく知ろう、と
1位「知らないからこそ純粋に見ることができる 知ったからこそ見えなくなるものもある お前が見て感じたものを大事にしていけ」
それからまもなく、泰平の世のために命を捧げた幾多の人間と人馬の魂を鎮めるための祭事の日がやって来た
人間といざこざを起こし、戸惑いが膨れ上がって人間への不信を爆発させる権田とは対照的に、谷風は純粋に、人と人馬の巫女が舞う鎮魂の舞を綺麗だ、と思い、そして涙を流した
自分は戦を知らない
権田の苦しみがわからない
そんな自分が人と人馬の営みをこんなにも綺麗だと思っていいのか、と
そんな谷風に、里の世話役が言ったセリフが、これである
曇りのない目でこの世界を見定めて、自分で考えて良いか悪いか決めたら良い
それは物語から離れ、現代に生きる私たちも持ち続けなければいけない心構えなのかもしれない
苦しみと葛藤の末、権田は人里で仕事をすることを決意する
人間と、人間と共に生きる人馬と、少しでも時を過ごして、これからをどう生きるか決めるために
「いいだろう あるぜ お前みたいなやつにしかできない仕事が」
世話役は権田に仕事をさせることを決めたのである
第四巻は、そんな権田や三国、職人の許へ弟子入りした谷風が、人や、人と共に生きる人馬達と出会い、様々な思いを抱えながらそれでも前に進んでいく姿を描いている
次回第二部完結、乞うご期待である
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