前回までのあらすじ
サクラは得意のピアノを披露し、子供達も目を瞠ります。加賀美は30年前サクラを送り出す際顔を見れない状態だったことをずっと悔いており、今回笑顔で送り出すことが出来ました
サクラは再度下屋からの緊急の呼び出しがあり、結局今回もフライングに終わり、下屋の心配性だったのです…
NICU ①
大原の赤ちゃんは発育が悪く、NICU(新生児集中治療室)に見学に行きます。あまりに未熟な赤ちゃん達の状態から大原は不安になりますが、サクラはNICUは赤ちゃんの病気を治す場所ではなく、赤ちゃんを育てる場所だと言います
815gで産まれて来た大原の赤ちゃんは、NICUに入ることになります。夫は費用の心配をしますが、養育費用という制度でほとんど補助され莫大な医療費が請求されることはないと言われ、安心します。翔と名付けたものの、あまりの小ささにショックを受けています
保育器が隣だというここでの先輩の西山からユウナは570gから1300gまで大きくなったと言われ、自身を責めるのは時間の無駄、そんなことより搾乳を頑張れと言われます
ここで23週1日推定600gの切迫早産の搬送依頼が来て新井は気を引き締めます。12個しか保育器がなく、いつも満床のNICUで、今回はユウナに保育器を出て貰うよう西山に話し、西山は自身も譲ってもらったこともあり、快諾します
受け入れ可能になり、被膜児で娩出することになり、早産児は皮膚がビニールの様に薄く破れやすいため、室温の調整が必要です。小泉は何とか出産し、即赤ちゃんはNICUに入りますが、障害等のリスクが高い中、何で産ませたのかと夫は取り乱してしまいます
新井は頭を冷やすために屋上に行き、加瀬と落ち合います。加瀬に自分が助けた子に重い障害が残った場合助けたことに後悔するか聞くと、命を助けることだけを考えると即答します。新井はNICUはそんな単純なものではないと感じつつ少し元気が湧きます
NICU ②
小泉夫婦は早産のことで自責の念を抱いていますが、サクラは誰も悪くない、ただ自分の子供として赤ちゃんを見てあげて下さいと言います。大原夫婦は翔がついに管を抜いて自力呼吸に挑戦するということで、緊張しますが、上手くいき、初めての鳴き声にやっと母親になった気がすると涙します
新井は小泉夫婦に早産児でも元気に育つ赤ちゃんはいる、そのための最初のハードルは72時間だと言います。脳室内出血の90%は出生後72時間で起きるからです。今橋は新井はとても優秀な新生児科医だが、責任感が強過ぎると言います
小泉夫婦の赤ちゃん(陽介)は産後7日目で腸管穿孔が原因で脳室内出血(グレード4)を起こします!非常に難しい状況で、新井は淡々と説明し、今橋はある程度覚悟もしておくようにと夫婦に話します
大原の妻は友達から赤ちゃんの事で連絡が来ますが、早産で未熟児な事をまだ話せていません。陽介の様態は急変し、今橋は小泉夫婦に陽介を抱かせてあげようと提案しますが、新井はまだ諦めたくないと意地を張り、今橋にたしなまれます
結局残り僅かな時間で夫婦はしっかり陽介を抱き、陽介は逝きます。この件で大原夫婦はこの事を一生忘れない、翔を大切に育てると心に決めます。900gになった翔を初めて抱き、大原はその命の重さを実感します。新井は気丈に振舞っていますが、内心相当参っています
NICU ③
新井は彼氏に誘われベイビーのライブに行き、一緒になろうと言われますが、呼び出しの電話が入って来ます。26週のMD双胎の帝王切開で人手が必要で、ちょうどサクラも出てきて一緒に病院に向かいます。新井はナーバスになっており、上手く対応出来ず、その日から1週間仕事を休みます
翔の隣の保育器のサツキの親(森口)が顔を見せないのは、サツキが18トリソミー(染色体異常の一つ)を受け入れられないからです。誰にでも起こりうるものとはいえ、当事者になってしまえば、現実をなかなか受け入れられるものではありません
兄のマサキの言葉から、森口夫婦はいつか家族として過ごせることを願います。新井は他の病院の小児科医をやることに決まります。森口の妻はついにサツキと面会することに決め、そこで大きくなったサツキの手のマッサージをしてあげます
すると今橋がサツキを家に連れて帰らないかと提案します。様々な不安事から流石に決断出来かねる森口でしたが、今橋は今日の一歩はサツキにとって大きかったと話します。その後妻はサツキを受け入れるために帽子を手編みし、2泊3日の一時帰宅を行いマサキも喜びます
翔の様子がおかしいと感じ、調べてみると、敗血症(細菌感染を起こしてそれが全身に及んでいる状態)だと分かり、慌ただしくなりますが、肝の座った妻は受け入れ、少し強くなったと夫に言われます。結局予後は安定し、生後2か月半で退院となります
サクラは逞しくなった大原夫婦を見て、NICUは赤ちゃんと一緒に両親も成長させる場所なのかもしれないと上手くまとめたところでこの巻は終わります
まとめ
NICUのことはちょこちょこと話が出てはいましたが、今巻でメインとして取り上げられると、その繊細かつ壮絶な世界に圧倒されてしまいます。確かに両親の資質等も関係あるのかもしれませんが、未熟児や障害を持って産まれて来るのは最早運で、誰が悪いということもないのに、親ばかり悪く見られる風潮があります
赤ちゃんが産まれるという事自体が奇跡的な事で、その中で確かに症例としては少ないことなのかもしれませんが、NICUのような場所があり、葛藤を繰り返している医師や家族がいることが伺いしれます。非常に儚い命を一緒に大切に育てていく場所として、NICUの存在価値は大きいです
その分医師にも過剰な負担が掛かるため新井の様に優秀でも辞めてしまうケースも多いようです。現場に戻ってくる医師は稀で、想像を絶する覚悟と忍耐力が必要なことが分かります
どうしても妊娠はおめでたいことで、赤ちゃんが産まれることは当たり前という風潮がありますが、パーフェクトベイビー願望というか、他者とのちょっとした違いを個性ではなく、欠陥品と捉える人が一定層いるようです。初孫を心待ちにしている家族等は心無い言葉を言って傷つけるのです…
コウノドリは様々なケースから、奇跡みたいな妊娠・出産にまつわる様々な出来事を淡々と語り、読者へ啓蒙してくれています。少しでもこの優しい認識が広がっていって欲しいものです。8巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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