前回までのあらすじ
ブルーノはライブのサポートに呼ばれ、ポーランドと言えばボーリッシュジャズという考えに否定的です。ライブでは非常に繊細かつ緻密な演奏をし、ミスした仲間には水を掛け、何事もなかったかのようにプレイを続けるブルーノに、客として観ていた大が思わず「あいつ…マジか」と呟きます…
凄腕放蕩ドラマー・ラファエル
フランス人のラファエルという凄腕ドラマーは、一つのバンドに留まらず、多くのミュージシャンのサポートを行い、自身のコネクションを広げたいと情熱的です。どんどん時代を遡り、ラファエルの根底にはジャズは流動的で、多くのミュージシャンとセッションする事で腕を磨いていくというものがあるようです
あるライブで各パートの特徴を的確に分析し、長所を引き出し締めくくったラファエルに、過去唯一ライブ途中で帰ったピアニスト・ブルーノが面白い話があると持ち掛けます。レコード会社のハインドルからも同様の事を告げられ、ラファエルは渋々話を聞く事にします
ブルーノは「真実か挑戦か」というゲームをしようと持ち掛け、まずブルーノは真実を選択、ラファエルは何故ライブ途中に帰ったのか聞き、ブルーノはその事を詫びます。挑戦はスコッチを一杯ストレートで飲む事で、逆に真実としてブルーノに一番好きなジャズプレイヤーを問うと、セシル・テイラーと答えます
ブルーノは過去の生い立ちからセシルのコンサートで虜になった話をし、核心の面白い話とは、ハインドルから2人のプレイヤー(大とハンナ)と会って欲しいと言われた事だと言うのです。大は組めばヨーロッパ1のプレイヤーになれると豪語、その大胆さにブルーノは却って気を良くするくらいのものだったのだと…
結局セッションはやる事になり(ラファエルはあくまでバンドを組む事には否定的)、4人が顔合わせします。懐疑的な部分もあるため、ひとまずセッションしてみて、良かったら組むという事で合意し、まずはハンナが飛び入りをします
4人の相乗効果の凄まじさも、ラファエルは帰り…
ハンナの力強いベースに圧倒されているピアノを見かねたブルーノが替わりに加わります。二人はまるで対話しているかのような音の探り合いをし、ラファエルは二人の音しか聴こえて来ないと感じます。ここで大が加わります
大の見事な、流れるような演奏に最早水を掛ける暇もないブルーノ、そしてついにラファエルが登場します!ラファエルが入った事で各々のリズムが一気に整頓され、完全に一つのバンドとして成立しています。大は今まで演ったどのドラマーよりも技術が高く、底の見えない余力を感じます
4人は凄まじいオーラを発し、客も圧倒され、一気に15分演奏します。そのまま次の曲「So what」に移り、大の前のめりのソロに引っ張られ、バンドは更に上がっていき、大は国も性格もバラバラな4人が感情まで分かり合ったらどんな音になるんだと身震いします
約束通り大・ハンナ・ブルーノは終演後席に着きますが、ラファエルは店を出て行ってしまいます!大はラファエルを諦めきれず、翌日二人きりで話をし、ラファエルは3人のプレイを客観的に分析しますが、大は組まない理由にはならないと食い下がります
ラファエルはジャズを愛し、コネクションを広げ、誰にも縛られず何時までも演奏し続けられる状態でいたい、自己中心的なのだと言います。大はラファエルのドラムは優しく包み込んでくれるようで、根幹に人を楽しませたいというものがあるのだと感じ、ここで二人は別れます
ラファエル加入で念願のカルテットに!
ラファエルは相変わらず人気者で、サポートに引っ張りだこですが、どこでも「楽しかった」「いいドラムだった」と言われる事に疑問を感じます。ラファエルは大の前に現れ、心変わりしバンドに加わると言います!律儀にブルーノ・ハンナにも直接伝えに行きます
ハインドルとも会ったラファエルは、数多くのプレイヤーとその場限りのセッションを繰り返して来た中、一つのバンドに留まる事のリスクも踏まえた上で、月が奇麗だったからという理由でバンドに加わる事にしたと告げます
4人は早速音合わせを始めます。ラファエルは3人それぞれの個性を感じながら、大がリーダーだと言うため、ブルーノが揉めだします。ブルーノはリーダーは交渉事から移動の手配、宿泊や練習とリハのセッティング、そしてギャランティーの支払い等が出来ないととごね、大に問うと、大はやりたいと言います
口論もヒートアップし、納得の行かないブルーノは一人帰ってしまいます。大は逆に初日から言い合いになった事を嬉しく感じます
1週間後、ブルーノは4人で勝つための曲を作ったと難解なテーマの楽譜をメンバーに渡します。大はいよいよ所持金が底を尽きてしまいます。翌日にはもう新曲をある程度こなせるメンバー、ラファエルもハンナもある程度この曲を評価しますが、大はこの曲では勝てないと言います
ジャズ好きに向けられたこの曲より、もっと間口の広い、ヨーロッパ1になるには全員のためにプレーしないとと語り、ブルーノはまた怒って帰ってしまいます。大は去り際オレも勝ちたいと言います
ブルーノが夜フラフラになりながら練習する大を見つけ、金がないなら何故バイトをしないと聞くと、大は今は音楽しかやらない、音楽をやるためにヨーロッパに来た、日本に色んなものを置いて来たのだと言います
ブルーノは大の姿勢にお前を認めていない、でもオレ達は一緒に勝つんだと100ユーロ差し出すところでこの巻は終わります
まとめ
前巻で登場したブルーノは一癖ある性格とは裏腹に繊細かつ美しい旋律を弾くピアニストです。そして百戦錬磨の放蕩ドラマー・ラファエルに白羽の矢が立ち、4人はセッションをしますが、その相乗効果は凄まじく、観るものを圧倒し、底が見えない共鳴を呼びます
ラファエルのポリシーとして、一つのバンドに留まるのではなく、多くのミュージシャンと手合わせし、幅を広げて楽しく生きて行きたいというものがありましたが、何処でも評価され、言い合いも何もない環境に疑念を抱き、大の熱心な勧誘にも心動かされ、4人のバンドが始まります
主導権を握りたかったブルーノでしたが、ラファエルからバンドの発起人であり、一番華がある大がリーダーだと主張され、ブルーノは納得がいきません。大自身もリーダーをやってみたいと意欲的で、ヨーロッパ1になるという野心を抱き、強烈な自我を押し出していきます
流石のブルーノもそんな大を一目置き、100ユーロ貸してくれるのです!この一癖も二癖もあるバンドメンバーで、大はヨーロッパ1を目指し突き進んでいこうとしています。5巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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