「バガボンド」27巻の数々の激戦と成長譚~一条寺の下がり松での死闘決着!吉岡と武蔵の覚悟の差…植田最後の一の太刀~

前回までのあらすじ

蔵人植田を探しています。無数の死体が転がる中、タバコをふかし、「見ろよこのカラス、目ざとく狙ってやがんだ、あいにくまだ死なねえよ」と植田が呟きます…

生き残った武蔵

小次郎武蔵のことが気になるようです。妙秀に日に3度は居場所を尋ねてきます

武蔵は本気で命のやり取りをしようとしている者とそうでない者の違いが色で分かるようになってきます。覚悟のない者には色がないのです!

余一は剣の時代はとうに終わっていると述懐します。それでも別の生き方を選べるでもなく生きていくほかないと…余一武蔵に抱き着き自分もろとも貫けと叫びます。倒れ込んだ武蔵余一の首を折ってしまいます。「重てえな俺の体の何もかも」と言いながら、まだ仕留め続けます

ふらふらになりながらも、「ぬたあん」と剣の威力は増し、迫りくる者を倒し続ける武蔵、最早意識は飛んでいます。灰色の景色の中柔らかくなった武蔵の剣技は鋭く、何と残り数人のところまできます!この地獄を抜けられる…先を見てしまった武蔵、十剣多賀谷彦造を無刀のままあべこべに斬り、蹴り倒します

植田蔵人は生き残っている武蔵を見て、これだけいてなぜ一人を討てなかったのだろうと言います。覚悟の違い、裸の命をさらして生きてきた者と守られてきた者の差だと述懐します。剣の価値によって地位を得た名門の誉高い吉岡がその魂を失うのもまた時代の必然だとしたら…そうなる前に取り潰してしまえと拳法先生が遣わしたのがあの男なのかもしれないと…

万死に値すると悔いる植田は最後の炎を燃やします。吐きながらも生き残った武蔵光悦に研いで貰った刀を探します。脇差は諦めて京を出ようという武蔵植田蔵人は最後の一瞬を狙っています

以前七宝寺沢庵に言われたことを思い出しながら、自分の刀を拾おうとすると、蔵人の刃が襲います。咄嗟に避けると抱き着かれ、その後方から植田が最後の一の太刀を狙います!

植田最後の一の太刀

植田の回想が入ります。30余年前、一条寺下がり松で、植田は捨て子として拳法に拾われます。良平と名付けられていた子供は、共の植田の子として育てられます。剣の天稟がある植田も含めて、清十郎伝七郎と3兄弟のようだと拳法は言います

ある日の稽古で伝七郎の隙をわざと見逃した植田拳法は叱ります。これで3度目だと…「お前が今した遠慮・手加減が伝七郎に勝負の形を歪めて伝えることになる」と。一の太刀をモットーとする拳法は、植田に出ていけと言います

植田吉岡の門前で「ほかに行くところはないのです。人として生きたいのです。私が人として生きる術は剣のほかにないのです」と頭を下げます。清十郎伝七郎も一緒に土下座します。「私と立ち会ってください、あのとき私が歪めてしまった勝負の形を伝七郎に正しく伝えられれば本望です」と言う植田拳法は、「一の太刀!いま!ここ!次はない!」と言い、風呂に入れと許します

植田最後の渾身の一の太刀が武蔵の左後ろふくらはぎを斬ります!植田は息絶えます。蔵人の亡霊は「我々が皆一度は目指したものにきっとあんたはなれたんだ」と言います。武蔵は脚に深手を負い、這いつくばるように京を出ようとします

川で手当てをしていると、なんと朱美が現れます。一条寺からずっと付いてきたという朱美、まだ幼かった頃、「あたしを一緒に連れてってくれたら良かったのに」と言います。朱美は短刀で武蔵を刺し、「あたしは吉岡清十郎の女よ」という言葉を残し、川に飛び込みます

おつうのことを想いながら、雪が舞い散るなか佇む武蔵。これからどこへ行こう…武蔵が「小次郎…」と呟いたところでこの巻は終わります

まとめ

不可能に思われた吉岡70余人との死闘、なんと武蔵は生き残ってしまいます。後半は疲労と、負った傷もあり、最早意識朦朧とする中、逆に剣の勢いは増し、「ぬたあん」といういい意味で力の抜けた一振りで仕留めていきました

この一条寺の下がり松の死闘はバガボンドの中でもっとも過酷で、壮絶な描写でした。鬼気迫る、命の灯が尽き果てるまで切り結ぶ様は最早圧巻で、観る者全てに特別な感情を呼び起こします。井上雄彦先生もきっと描き切って多くを得、多くを失うくらい消耗もしたと思います。それ程生き死にを描くということは想像を絶するものなのでしょう

時代が変わっていく中、群れて回りの顔色を窺い、研鑽を怠っていた吉岡と、単身どこまでも高みを目指す武蔵の覚悟の差がこういう結果を生んだのです。植田は悔いながらも、最後の一の太刀で武蔵に深手を負わせます

植田の過去のエピソードで吉岡との出逢いと一の太刀への想いが伺い知れ、非常に惜しいキャラですが、吉岡一門は全滅します。全てを斬った武蔵、鬼の所業ですが、何を得、何を失ったのでしょか?全てを終え、武蔵から出てきた言葉は「小次郎」、二人の邂逅は今後あるのでしょうか?続巻も読みましょう!!

おまけ

NHKのプロフェッショナル井上雄彦先生は出演しており、DVDに映像作品として残っています。特にネームを描くのに苦労されている様子が克明に写しだされており、こんなに苦悩しながらバガボンドを描いていたのかと感嘆してしまいます。是非観て欲しい作品です

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