前回までのあらすじ
一条寺の下がり松では烏が群がっていた光景を惨いもんだと嘆く人がいます。そこに小次郎が現れます。小次郎が武蔵を想いながら木の枝を振るっています…
心を天に抱いて祈ろう
二条城の北に隣接する京都所司代に武蔵の身は囚われていました。京都所司代の板倉勝重は光悦と逢っています。一条寺の件は吉岡側にも否がある、武蔵は強すぎたのだと言います。武蔵の身は此方にあった方が安全である、また士官の誘い等身辺も慌ただしくなってきたといいます
牢屋の中で治療を受ける武蔵、医者に「光無き地獄の行き止まりに向かうあんたを止めてくれたんだからねえ」と言われます。おつうと城太郎、沢庵が面会に来ます。その後城太郎はおつうが武蔵が剣を使えなくなって願いが叶って幸せかい?と言います。おつうは好きな人の好きなもの(剣)を嫌いになったりしない、ただ分からないだけと泣きます
光悦の元にも武蔵の士官の誘いの手紙が来ています。「剣に生きる」ということ、人の世の中の枠組みの中で折り合えるような別の意味を与えてあげられたら少しは生きやすくなると言います
沢庵はおつうを妻に娶れと言います。江戸からも剣術指南役の誘いが来ている、仕官して世間を知れと…道を極めたなら刀を抜くまでもない、いかに鞘から抜かずにおくか、そのために死に者狂いで剣を振っとるのだという境地に達したのではないかと…
沢庵は自分の中にも我執はあると言います。沢庵は最近天の声を聴いたとも言います。「お前の生きる道はこれまでもこれから先も天によって完璧に決まっていてそれが故に完全に自由だ」と。武蔵の苦しみを分かるものが誰一人いない、それでも天と繋がっていると。沢庵は心に天を抱いて祈ろうと言います
小次郎の剣技の冴え
小次郎の身を案じる光悦と妙秀、その元へ小倉細川家家老岩間角兵衛が名刀菊一文字を研いで欲しいと訪れます。引退したという光悦に迫る岩間、この名刀を振るう剣豪がいるというのです。小次郎はその男(小川)が小次郎の棒切れを振るっているのを見て、相手をし始めます。小川はまるで大木で斬られているような感覚に陥ります
聾唖の剣士というところから佐々木小次郎だと悟った小川は、小枝の扱いには慣れていないと剣を抜きます。しかし小次郎は小枝でいいと小枝で構えます。真剣で勝負に出た小川ですが、小次郎に小枝で一刀され、気を失います。岩間と光悦は小枝で倒された小川を見つけます。岩間は佐々木小次郎だと認識します
寺の小坊主達に馬鹿にされた城太郎、ボコボコにされ、その着物を直しているおつうは甘い香りを感じます。なんとタバコをふかした植田の亡霊が現れ、「70余名の苦しみを抱えて生きるんだよ、幸せなんてとてもとても…」と言います
「心の中に燻る怨念の炎が消えない限りここから離れられぬらしい」という植田、「武蔵はこの螺旋から逃れられない、間もなく武蔵最強の評判は不動のものとなる、武蔵を倒し一気の成り上がりを狙う者たちが沸いてくる」と言います
又八はおばばを探しています。おばばの噂を聞き、やっと見つけたと思いきや、おばばが血を吐いているところを又八が発見するところでこの巻は終わります
まとめ
囚われの身となった武蔵でしたが、厳罰を処されるような雰囲気ではありません。むしろその誰も達したことのない剣技に魅せられ、仕官の勧誘が舞い込む程です。十分な実績・箔が付いたということでしょうか?おつうを嫁に貰えと言う沢庵ですがそこは武蔵、素直に応じる気はありません
石舟斎の境地に辿り着いたかに見えた武蔵ですが、まだまだ我執はあり、剣を極めたいという想いは募るばかり…しかし今回ばかりは脚の深手でどうしようもありません。士官という別の道が開けていく中、武蔵はどんな選択をするのでしょうか?
岩間の元剣術指南役を務める小川が小次郎と立ち会い、気を失ってしまいます。名刀菊一文字を研いで貰いに訪れていた岩間には、この佐々木小次郎はどう映ったことでしょうか?
おつうの前に現れた植田の亡霊、吉岡一門を壊滅させてしまった武蔵、その怨念・憎悪は相当のもの、自分だけ幸せになるなどけしからんということでしょうか?武蔵にとって大事な人・おつうに絡んでくるのも当然と言えば当然です。それも踏まえた上で武蔵、おつうは生きていかなければならないのでしょう
又八が改心し親孝行を…と思っていた矢先のおばばの吐血、心配ですね!様々な人の想いが交錯するバガボンド、次巻も読みましょう!!
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