前回までのあらすじ
大は正直に今悩んでいると告げ、ベーシスト加入でどう変化が起こるか…と相談します。天才に嫉妬し、変化より足す事にしたと言いますが、シェリルは大の変化を敏感に感じ取り、十分変わっていると言います
大はメンバー3人の部屋にサックスを取りに戻り、夜中だけど音を聴かせたい人がいると再度出掛けます…

ボストンにはアイツがいる…
フロリダータンパでシェリルは初めて大のステージを観ます。音の迫力が凄く、まずはジョーのソロからです。前日シェリルに聴かせたものと違ったソロに挑戦すると大は気張り、いつものシリアスさとは真逆で攻めますが、探り探りで、ジョー・ゾッドが加勢します
苦しみながらも明るいメロディーで繋ぎ、自由さを増してトンネルを抜けた大にアントニオも微笑み、シェリルは凄まじいものを目撃します。翌日シェリルを車に乗せ饒舌な大、シェリルは動き続け、上がり続けるアナタを尊敬すると感じます
この感情は尊敬だけかしら?とシェリルは去り際大にキスをし、フロリダでのライブも終わり、次はボストン…アイツがいるところです。ジョーが酔い潰れる中、車内でゾッドはバークリー音大について語り、世界中からジャズプレイヤーを志す若者が集まると言います…NYの前にミドルサイズの街で話題にしスモールスタートしたいのです
大はどこか心ここにあらずで、沢辺が今ボストンにいる事から、例の事故以来どのツラ下げて会えば良いのか?と複雑な心境です。アントニオは大の異変に気付き、大はメンバーに沢辺の事を打ち明けます。街に着くと散策すると言う大は東京を出て2年半、沢辺に会いたいのに会うのが怖いと感じます
一つ言えるのは…世界を回ってここまで来て、お前を避けたままボストンを去る事は…しないという事です。ライブではいつもの大に戻っており、いつにも増して激しいソロを見せつけます。今夜沢辺は現れませんでしたが、沢辺は大がライブをしている事に気付いたようです
翌日練習していると大の事を知っている韓国の音大生が現れ、一緒にランチする事になります。沢辺の事を聞きますが流石に知らないようです
大と沢辺、久々の再会
一方当の沢辺は学食で物好きなコーラに話しかけられ、噂の右手の動かない日本人留学生として浮いています。沢辺は左手一本で高難易度の曲もこなします。大達は街の音を聴きに行き、新しい音も耳にしますが、大はずっと心ここにあらずでアントニオは沢辺とこの街で再会出来たらそいつと組みたいんだろ?と投げかけます
沢辺は唐突に現れた大達のライブにいつ行こうか迷い、友人のライブを観てピアノを酷評し、自分で選んだ大学だけど頭でっかちな奴が多いと感じます。沢辺はついに思い立ち大のライブを観に行きます。サックスの音色に大が死ぬ程吹いて来たのが分かる…それがお前だよなと聴き入ります
演奏中大は沢辺に気付き動揺します。終演後向かいのスポーツバーで落ち合い、乾杯し2年以上連絡がない事を沢辺は怒ります…玉田は律儀に連絡をくれるようです。沢辺の右手は手術を繰り返す度に少しずつ良くなっているものの上手く動かせません
ライブについて動揺したのはともかくやっぱいい音だなと言われ大は男泣きします。大はきっと沢辺なら前を向いて歩いていると勝手に思い込んで、思い描いたまんまのお前が現れたから…と嗚咽します。メンバー達は大が沢辺と会っている事を確認してホテルに戻ります
沢辺は右手が戻るのは絶望的な中、作曲科で奮闘し、大の動向も逐一チェックしており、自分ばかり気にかけていて…と怒ります。そんな中大は沢辺にお前の曲をバンドにくれないか?と図々しく持ち掛けます。別れてから今夜のギグの確認をする大、沢辺はモメンタムのある曲をカルテット用にアレンジします
大は確実に沢辺と再会した事が音にも出ており、メンバーも敏感に感じ取ります。すると沢辺が現れ、バンド用の譜面を置いていき、アントニオは後を追い、音楽を辞めていない沢辺が偉大だと堅く握手します。右手について問うと、頭と指が連動せずイライラしてしまうと話します
大と沢辺、奇跡の共演
沢辺は同級生に煽られ、お前に手が動かねえって事が分かるワケねえと怒りを露わにします。やはり右手は満足に動く事はありませんが、大から今夜のライブの3曲目で例の曲を演ると連絡が来ます。ライブに赴いた沢辺はゾッドのドラムを暖色、アントニオのピアノをオレンジや黄色、ジョーは唯一暖色でも寒色でもプレー出来ると評します
今のメンバーがベストだと感じながら、沢辺はもし右手が動いてオレがピアノをやってたら…とどうしても考えてしまいます。いよいよ3曲目「MOMENTUM」を沢辺作曲だと大が告げると、何とアントニオがこの曲を弾くのは作曲者本人だ!と沢辺を呼び込むのです!
まさかの展開に流石に怖気づく沢辺ですが、弾るしかねえだろと何と左手一本で弾くつもりです。スタートから沢辺のそれと分かる左手で、大の凄まじいソロからジョーも引っ張られゾッドまで強いソロになっていきます。この流れから何と沢辺に託すのです
沢辺は左手一本とはとても思えない壮絶なソロを弾き、これ以上上に行くには音が足りず右手が必要です。沢辺は手袋を外し動かない右手を必死に動けと念じ、大はオレには何も出来ない…頑張れと見守ります。沢辺は気張り、ついにメロディーが生まれ大は感動し、右手は動き不思議なオーラに包まれます
アントニオは見届け自身の役割を終えた…と店を出ようとしますが、大は続きをやるぞ!とステージに戻し、沢辺と大はハグし入れ替わります。大はアントニオに次やったら殺すぞと毒づきます。その後戻ったカルテットは凄まじい演奏で沢辺はこれは…と感じ入ります
一方ジェイソンは皿洗いをしており、大からNYに着いたと連絡を貰い喜ぶところでBLUE GIANT EXPLORERは終わります
まとめ
音楽ものは音が無い描写の中、如何に音が聴こえて来るか表現方法の工夫が必要ですし、物語の起伏も重要になって来ます。BLUE GIANTはJASSで同じメンバーだった沢辺が交通事故で右手に重傷を負い、そこで解散し、大は思うところはあるものの立ち止まらずヨーロッパに向かい、現在地はアメリカです
アニメ映画版では事故後の沢辺と奇跡の共演が話題になりましたが、漫画版では全くその後が描かれず、彼のその後を気に掛ける方も多かった事でしょう。石塚先生はボストンで大と沢辺が落ち合うというドラマチックな展開を最終巻で持ってきます
しかも沢辺作曲の曲をバンドで演り、沢辺をステージに上げ一緒に演奏するのです…左手しか使えない沢辺は圧巻の演奏を披露するに留まらず、動かない右手にも可能性を見出す程です。ここで注目なのはアントニオの動向でしょう
同じピアニストとして、元メンバーの沢辺の事を認め、しかも自分の居場所が無くなったと考えてしまう心理は分からなくありません。しかし大は今はアントニオとバンドを組んでいる訳で、次やったら殺すとまで言うのです…大の覚悟と心意気を感じた気がしますね
音楽ものは如何に読者にドラマチックに話を展開して引き込むかが大事になって来ます。そういった意味で、今巻の沢辺との再会・共演はこの上ない極上のドラマとなり鮮烈に読者に訴えかける素晴らしいものになったと思います
終わりに
アメリカを横断してきた~EXPLORERはここで終了します。日本の仙台から始まった大の旅もいよいよジャズの本場・NYに拠点が移る~MOMENTUMが始まります。世界一のジャズの聖地での大の躍進に期待したいところです…ここまでお付き合い頂きありがとうございました
コメント