はじめに
BLUE GIANTの続編という事で、宮本大が日本を飛び出して主にヨーロッパでの活躍が描かれるのがSUPREMEです。好評を経てシリーズ化し、ジャズ・音楽ファンのみならず全世代に愛され発行部数を伸ばしています。今回はこのSUPREMEにスポットを当てていきます
新天地はドイツ・ミュンヘン!!
大が選んだ新たな冒険の地は、ドイツ・ミュンヘンでした!言語もままならない中、何とかホテルにチェックインし、決めていた初日練習を橋の上でしようとすると、警官達に止められます。ひとりぼっちの大ですが、相棒のサックスはいる!と何とか初日練習をする事が出来ます
大は常宿と練習場所を確保し、目星をつけていたジャズスポットへ繰り出します。そこではピアノとベースの男女デュオが静かに演奏していて、客も静かに聴いており、大は面食らいます。大は早速ここで吹かせてくれないかと店員に持ち掛けますが、頑なに断られてしまいます
翌日更に規模の大きなジャズスポットへ行き、そこでも100人以上の客は静かに聴き入っており、大は国の違いを感じます。例によって終演後店員に持ち掛けると、アジア人と言うだけで門前払いで、大は由井がドイツは前衛的でジャズに開いていると言っていたのに、そのギャップに驚きます
5日目、寒空の下練習していると、ある婦人が大に手袋を寄越し、「グリーンドルフィンストリート」をリクエスト、大は最初の客だと全力で吹き、喜ばれます。手袋は小さくて入りませんでしたが、大はその気遣いに感謝します
ドイツでの初ライブ!
大はカフェで珈琲の美味しさを呟いていると、クリスという大学生に声を掛けられます。大を気に入ったクリスはホテル暮らしなら家に来いと唐突に誘い、家賃はいらないからビール代を払えと言われます。大は何故クリスが助けてくれるのか疑問に思いながら寝ます
翌日クリスは大とジャズスポットを回って熱心に交渉してくれますが、上手く行きません。大はどうしてそんなに親身になってくれるのか問うと、いつか世界一になる奴と知り合えたらステキだから、普通の事だと言うのです
クリスは何とか交渉をまとめ、非常に小さな店舗ですがライブが決まり、訪れた大は完璧な店だと評します。店の最低チャージは3ユーロ、相場的にこの店の最高は10ユーロだと言われ、大は迷わず10ユーロのライブをすると宣言します。クリスは客集めに奔走します
クリスは大学の知り合いに片っ端から声を掛け、5人は確定します。更に迷っている人にも声を掛け、何故そんなに熱心なのか聞かれ、上手く言えないけど大はいい奴だからと答えます。ライブ当日、大のリハーサルで店員はその腕に驚きます
クリスは全員友達だとは言うものの、ちゃんと10人集めてくれました。大は感謝し、この国境を超えて伝わって来たジャズはきっとここでも伝わると「First Note」からスタート、却って狭い店はサックスの音を十分に伝えられる強みだと前向きです
大はとにかく速く、熱く、心に届く演奏を心掛け、客もそれぞれに様々な感情を抱きます。大は一人で吹いている事に心細さも感じつつ、一人で来たんだと踏ん張ります。大は叫び、更に熱量を帯び、フルスロットルで吹き続けます
大のスランプ
ドイツでの初ライブは成功に終わり、客からもいい夜だったと言われます。翌日も早速大は練習に励み、クリスには友達から昨夜の興奮冷めやらぬリアクションが多々届きます。大は自身の演奏に足りないものは何か自問自答し、練習場所に現れたクリスは大が本当に世界一のプレイヤーになりたいのだと悟り身震いします
大はギャラで沢山ビールを買って帰ると、クリスは最初のギャラで買った一本に大のサインをくれと言います。大はたった一人だけど俺が活躍すると信じてくれてるんだと感動します。大は家族にそこで初めて今ドイツにいるとメールします
場面変わって、夜の郊外で大はタクシーを捉まえます。お互い何でこんなところに…と感じながら、運転手はトルコ人で、出稼ぎでドイツで働いており、5年トルコに帰っていないと話します。ミュンヘンから30キロも離れた郊外で何をしていたのか聞かれ、大は長くなるがと経緯を話します
練習をしていると何か違和感を感じ、原因が分からずスランプなのでは?と思い、とにかく歩き続けてみる事にしました。ドイツの建造物・人々を見ながら様々な事を考え、時折走って、歩いて、何もない場所に辿り着きます
結局考えすぎていた、運転手は運転し続けるだけ、大は吹き続けるだけ、という結論に達し、タクシーは例のジャズスポットに行き着き何とこれからここでライブなのだと大が店に入る所でこの巻は終わります
まとめ
大が選んだ新天地は何とドイツでした!由井と協議し、ドイツは前衛的でジャズに開いていると聞いていたのに、ジャズスポットではどちらかと言うと静かに音楽を楽しむ客が多く、そのギャップに大は戸惑います
サックス一本で、アジア人の、無名の男がいきなり店に来て吹かせてくれないか?と言われても、流石に普通は断るでしょう。大の無鉄砲さも凄いですが、そんな大にも親身になってくれる人がいます。特にクリスは即座に大を理解し、いずれ世界一のプレイヤーになるのだろうと親切にしてくれます
これは外国というお国柄もありますが、人はまだまだ捨てたものではないと感じさせる描写です。特に音楽は言語・国境を超えて届くものがあるため、そこに賭けていた大にとっては嬉しかった事でしょう
初ライブもクリスが客を集めてくれて、大は渾身の演奏を披露、反響も良く大成功に終わります。大はJASSとしてバンド演奏にも慣れていますが、根源的には単独の練習・演奏にも慣れており、たった一人でも成立するライブ、これがジャズだと言う強烈な自我を披露し、客にそれが届くのです
音楽は聴く人それぞれの楽しみ方があると思いますが、初見でアジア人のソロのサックスを聴いて胸熱くなるという展開は非常に面白い描写です。大が信じている音楽に国境はないという根幹はここドイツでも芽吹いており、それが分かった大はそこで初めて家族にドイツにいると連絡するのが正に大らしいです
スランプもありつつ、まだまだドイツでの冒険も始まったばかりです…2巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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