「MONSTER」1巻の深まる謎と極上ミステリー~天才外科医・テンマの元に巻き起こる不可解な事件の数々…リーベルト家の息子・ヨハンはモンスター?~

はじめに

YAWARA!・MASTERキートン・HAPPY!とヒット作を連発する浦沢直樹先生が次に描いたのが本格ミステリーもの、MONSTERです。その複雑怪奇な、見事なまでの伏線回収、いつまでも心に残るホラー感が人気となり、累計発行部数は2000万部を突破しています。今回はこの人気作にスポットを当てていきます

天才外科医・テンマの葛藤

ケンゾー・テンマアイスラー記念病院の凄腕医師です。オペラ歌手の難しい手術も無事に終え、恋人のエヴァと幸せな時を過ごしています。順風満帆に見えますが、トルコ人の女性から、先に搬送されていた夫の手術を病院で一番腕の立つテンマが執刀しなかったことを指摘され、テンマはショックを受けます

エヴァとのディナーの際、人の命は平等ではないと言われ、テンマは戸惑います。エヴァは院長の娘で、婚約の約束をしています。テンマはブレーンとして、院長の論文作成に一躍買っていますが、徐々に院長の意向が強くなりつつあります

警察に急報が入り、リーベルト家で殺人事件が発生、娘は無傷、息子は重体で発見されます。双子の兄妹のうち意識のある妹が「ころして…」と呟いています。兄は頭部に銃創があり、危険な状態です。非常に難しい手術ですが、計画を立て、意を決して手術へ…というところで、同時にローデッカー市長が脳血栓で倒れたと連絡が入ります

院長は市長の後ろ盾が無くなるのを恐れ、一番腕の立つテンマに執刀させようとします。既にリーベルト家の兄のオペに入ろうとしていたタイミングで、前回のこともあり、テンマは葛藤します。結局テンマリーベルト家の兄の手術をすることにします(妹は相変わらず「ころして…」と呟いています

テンマの神がかり的な手腕で、リーベルト家の兄の命は助かりますが、市長は命を落としてしまいます。院長命令を無視したと周りからは糾弾され、テンマの立場が悪くなります。リーベルト家の事件は、物盗り・もしくはテロの線で捜査が行われています

生き残ったリーベルト兄妹

テンマは病院でもこのことを引きずってぼーっとしていることが増えます。リーベルト家の妹はベッドを抜け出し病院内を徘徊することがあり、やはり「ころして…」と呟いています

パーティーではチーフの座を奪われ、院長から将来の出世の見込みは無くなったと三行半をつけられます。エヴァにも馬鹿にされ、テンマは失望しながら、自身の行ったことは間違っていなかった、医者としての目を開かせてくれたのだとリーベルト家の兄に話掛けます。テンマ退室後、兄は目を光らせます

警察は妹(アンナ)に事情聴取をしようとしますが、強度の恐怖体験による心因反応として健忘が起きているようで話になりません。兄(ヨハン)と引き合わせようとしますが、テンマがそれを許しません

院長はマスコミからも注目になっているリーベルト兄妹の扱いについて、病院の評判を良くするために悪用しようとしています。兄妹に送られて来たお菓子のアメを深く考えずに舐めてしまいます

Dr.ボイアーテンマを主治医から外し、勝手にリーベルト兄妹を引き合わせ、アンナは叫び逃げてしまいます。ヨハンは涙しながら手を差し伸べており、院長命令で美談にし病院のイメージアップに利用するつもりです

エヴァにもフラれ、テンマは荒れ、酒を飲み泥酔します。するとボイアー・外科部長・院長が死体で発見されます!急いで病院に向かったテンマは大混乱の病院内で、緊急オペに向かおうとすると、リーベルト兄妹が失踪してしまいます

院長の葬儀では、エヴァは所かまわず泣き叫んでいます。BKA(独連邦警察)のルンゲテンマに尋問してきます。院長達の死因は毒殺で、キャンディに硝酸系の毒物が確認されています

この急展開でテンマは仕事を辞め日本に帰ろうかと考えますが、患者やスタッフから慕われているテンマは辞めないでくれと言われ、更に人事が一新され、なんとテンマが外科部長になることに決まり、テンマはその境遇に茫然とします

9年後、成長したヨハンが現れ…

テンマは外科部長になり、立場が逆転してしまったエヴァは、テンマに復縁を求めますが、テンマは拒絶します

ドイツでは中年夫婦殺人事件が頻発しています。ある程度裕福な子持ちではない夫婦が狙われており、ルンゲは単純な物盗りではなく、アドルフ・ユンケルスという錠前破りを含む複数犯の仕業では?と勘ぐります

女の誘いも絶ち、真面目に仕事に取り組むテンマの株はどんどん上がって行きます。するとユンケルスが車道に飛び出して車に轢かれ、重体となり、テンマが執刀することになります。ルンゲは9年振りの再開を喜びながら、今も院長殺害の事件を追っており、事件で一番得をしたのはテンマだと考えています

ユンケルスは一命をとりとめ、面会謝絶としますが、テンマが病室に入ると「モンスターが来る…」と発言します。ルンゲテンマ立ち合いの元ユンケルスを尋問しますが、確信を突かれたのかユンケルスは奇声を上げ混乱します

テンマユンケルスを散歩に連れて行き、心を許したユンケルスは幼い頃飾り時計が欲しくて盗みに入ってから錠前破りを始めてしまったと話します。そして震えながら「全員殺された…モンスターに…」と呟きます

後日テンマはその飾り時計を見つけ、購入してユンケルスの元へ行くと、見張りはキャンディで毒殺されユンケルスは姿を消しており、テンマは9年前と同じだとユンケルスを追います。廃屋の奥にユンケルスは謎の男とおり、ユンケルスは来てはいけないと言います

謎の男は何と成長したヨハンで、ユンケルスに報酬を与え連続殺人事件に関与させていたのです。ユンケルスを処刑するというヨハンテンマが諭していると、ヨハンテンマが望むような境遇にしてあげたんだよと言い、ユンケルスを銃殺してしまいます

去り際顔を見せたヨハンは「先生が僕を生き返らせたんだよ」と言い残します。後日テンマルンゲに真実を語りますが、不可解な事件のため、納得のいく結末を見ません。混乱したテンマが雨の中絶叫するところでこの巻は終わります

まとめ

天才外科医として将来を約束されたテンマがひょんなことから目の前のオペに優先順位等無いとリーベルト家の兄・ヨハンの執刀をすることで物語は動き始めます。妹のアンナは何かに怯えており、「ころして…」と呟いており、リーベルト夫婦殺人事件には何か見えて来ていない大事があるようです

一時期出世と将来が絶望的になったテンマですが、これまた不可思議な殺人事件から人事が一新され、何と外科部長に就任することになります。思いもかけなかったことにテンマは戸惑いますが、実直に医師として目の前の患者に心を傾け、皆から信頼されます

9年の月日が経ち、ドイツ国内では連続夫婦殺人事件が起こっており、錠前破りとしてユンケルスという男がマークされますが、ある日ユンケルスが失踪し、テンマが追いかけると、廃屋に同じく失踪していたヨハンが現れます

ユンケルス然り、アンナ然り、この漫画のタイトルとなっている「モンスター」と連呼されますが、これはヨハンのことなのでしょうか?ヨハンユンケルスを銃殺し、成長した顔を見せ、去って行きます。テンマは正直にルンゲに証言しますが、状況証拠が少なすぎて判然としません

ドイツで天才外科医として活躍しながら不可解な事件に巻き込まれるテンマ自身の信じた道を突き進む中で、何かとんでもないモンスターを助けてしまったのかもしれません…果たして2巻はどんな展開が待っているのでしょうか?

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