前回までのあらすじ
宗矩の愛犬太郎を殺したとして、城太郎が責められます。城太郎は顔のひっかき傷を見せながら、ちゃんと名乗り出て勝負して俺が勝ったのだと言いますが、処分すると言われます。城太郎は「殺すなら殺せ、その代わりお前も道連れだ、殺してやる」と言います
豪壮な武蔵
食いさがる城太郎を尻目に、武蔵は間に入り、「弟子の罪は師の罪」という言葉を知らんかと問います。そして、城太郎を投げ、ひと騒動起こします
四高弟が戸惑う中、他の家臣が殺気だち、一触即発の中、武蔵は冷静に「そういう台詞は他所と大してかわらんね」と豪語します。数々の修羅場を潜り抜けてきたから言える言葉です
武蔵は家臣たちを一網打尽し、さあ合戦だと息巻きます。そこで四高弟がその場を丸く収めようとまず家臣を引き取らせます。庄田は腹を斬れと言いますが、武蔵は合戦は始まったばかりだ、一人対一城の合戦だと宣言します
四高弟が呆れる中、場を離れていた村田が打ち込んできます!勢いよく飛び込みますが、武蔵に吹っ飛ばされてしまいます。武蔵は既に火のようになっています。四高弟は技の優劣ではなく、命のやりとりを望んでいるのだなと理解します。村田はついに刀を抜きます
床に就いている石舟斎はおつうに笛を吹いて欲しいと頼みます。おつうは大泣きしてしまうので吹きたくないと言います
村田の剣は城太郎が見えない程の太刀筋ですが、武蔵には見えています。強くなっていると実感した武蔵は、四高弟を前に、負ける気がしない、目を閉じてしまってもかまわんような…と豪壮です。庄田はこんな男がいるのかと戦慄します
四高弟相手に全く動じない武蔵!
4対1という圧倒的不利な状況も、数々の修羅場をくぐってきた武蔵は冷静に分析します。しかし、4人が4人共出来ると判断した武蔵は、何を思ったのか二刀になります!片手では肉は斬れても骨は断てんと木村が斬り込みます!
それより早く武蔵が木刀を投げ、木村の耳を直撃します!更に後ろからの村田の斬り込みより更に早く片手を振り、耳のいかれた木村は武蔵の脚に一太刀入れます
出淵が手裏剣を投げますが、武蔵はかわし、逆に投げ返します!そして鍔迫り合いになったところで出淵が武蔵の指を折ると同時に武蔵が腹を蹴り、二人は離れます
武蔵は指を直し、一人ずつ闘える橋の上に立ちます。橋の奥に石舟斎の庵があるため、なんとかここで決着を付けたい庄田は武蔵に対しますが、どんどん間合いを詰められます!庄田は突きを見せますが、武蔵は見切っています!そのまま右に刀をスライドさせて首を斬ろうとしますが、武蔵は避け、片手の剛腕一発で庄田の刀を折ってしまいます!この一枚絵は非常にカッコいいです!
臆した庄田は、石舟斎や兵庫助と対峙しているような感覚に陥ります。村田、木村が橋に登り、4人総出で掛かろうとしますが、武蔵は4人の達人に囲まれ、五感も、六感までも研ぎ澄まされています!焦りの原因はその先に石舟斎がいるからと見た武蔵、庄田が打ち込もうとすると、更に早く武蔵が一振りします!
まるで野獣のような殺気の武蔵、ここで石ころを投げつけ村田を川に落とします。木村が勢い良く斬り込みますが、素早く避け、左耳に続き、右目も手負いにしてしまいます!
武蔵とおつうの再会
ここで笛の音が聴こえて来ます!おつうが吹いているのです。瞬時に宮本村のことを思い出した武蔵の隙を庄田が狙います!更に出淵の打突を受け、再度足蹴にする武蔵、すると脚を掴まれます!川に落ちた村田です。そして庄田の突きを避け、その上から木村の渾身の一振りを受け止め、川に落下します
川の中で村田が羽交い絞めしてきますが、逆に沈めてしまいます。そして出淵の一振りを石で受け、逆に石を腹に投げます(出淵3度目の腹への一打)。おつうは武蔵のことを想い涙します
おつうの笛が幻だったと錯覚した武蔵、何とか4人を振り切り、一人竹を斬ります!石舟斎の庵にいるおつうは何者かが侵入してきたと悟り、へっぴり腰の刀を構えます。そこに武蔵が現れます!
「綺麗になったな」とは言ったものの、無様な嫉妬をしていることに気づいた武蔵は声を荒立てますが、おつうは恐怖のあまり体の動かし方を忘れちゃったみたいと言います。武蔵にほぐされ、おぶさりながら、石舟斎は病気で寝ていると言うのです
「天下無双、柳生石舟斎、殺さぬように勝つ自信はねえ」という武蔵をおつうが叩きます
庄田達が石舟斎の元にやってくると、おつうが付いています。武蔵の件を説明し、庄田が女性に危害を加えるような人間ではない、そして、強いという言葉を聞き、おつうは涙を流し嬉しがります。強くなりたくて村を出たんだよね…と
武蔵が石舟斎と庄田がいる部屋の屋根裏にて様子を伺っているところでこの巻は終わります
まとめ
この巻はとにかく柳生四高弟との激しいやり合いが最高にカッコいいです!目まぐるしく変わる戦況を、武蔵はたった一人で相手してしまいます。この神がかったコマ割りやカット等、計算しつくされた画角を、驚異の画力で描き切ってしまうのですから、井上雄彦先生の凄まじいまでの筆致には感服しますね!
4人の達人に囲まれ、更に集中力を増す武蔵、次々と迫りくる刃をことごとくかわしていく様は最早神々しさすらあります。僅かの間でここまでの達人に成長していたのです!やはり胤栄・胤舜の元での出来事が大きく影響しているのでしょう
そんな修羅場を潜り抜け、石舟斎の庵でなんとおつうと再会します。沢庵からある御仁の元にいるとは聞いていたと思うのですが、まさか柳生だったとは!運命とは時として酷でもあります。武蔵に悪い感情はないおつうですが、石舟斎を黙って殺させる訳にはいきません。一度別れて、後を庄田に託したものの、果たしてどうなるでしょうか?続巻も読みましょう!!
おまけ
紀伊国屋NY店の壁画に井上雄彦先生自ら武蔵や小次郎を描くという機会がありました。その模様はINOUE TAKEHIKO OTEAR HANDというDVD作品に収められています。貴重な映像なので、是非観てみて下さい!
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