前回までのあらすじ
いよいよやってきた際の際、なおも前へ突き抜ければと、小次郎と巨雲は笑みを浮かべながら斬り合います。抱き締めるかわりに斬るんだなと感じながら…小次郎が巨雲を斬り捨て、涙を流します…
一年前の約束を果たす…再戦へ
伝七郎の腕を切り捨てる武蔵…遡ることおよそ10日、京、慶長9年暮れー伝七郎が武蔵との再戦を記した高札を作ります。町人が集まっているところに清十郎が現れます。その前には武蔵がいるのです!「こんな大事になってしまうとは」と清十郎、あの時忠告していたのに…と呆れています
「伝七郎を斬ったら当然兄貴が出てくるんだろう?」と武蔵は強気です。時代は柳生と呆れる清十郎に、あくまで狙いは清十郎の武蔵は、「自分より強い奴を一人一人倒して行けば終いには天下無双だろう」と息巻きます。清十郎は去り、武蔵は高札に手形を付けます
場面変わって又八は以前赤壁八十馬にそそのかされたやり口で酒場で人を引っ掛けて推挙料を巻き上げ、女を買っています。ただ一人寂しいと感じています…
小次郎は表札を見て喜んでいます。吉岡の者がそのことを植田に告げると、植田はその者が小次郎だと気づきます。伝七郎は一人稽古に励んでいますが、そこに清十郎が現れます。武蔵と伝七郎の一年間の違いを感じ取る清十郎、伝七郎は凄み、稽古を頼みます。吉岡に生まれてきた伝七郎と、山から下りて来たばかりの獣同然だった武蔵、まだ磨かれていない部分が多く残されているのは…一目瞭然です
清十郎の剣は軽いと言う伝七郎でしたが、清十郎に剣を弾かれてしまいます。なぜ出火に乗じて殺してしまわなかったのだと苦言を呈し、色街へ出掛けます。武蔵は仏像を彫りながら、人を斬りまくった年月がまだまだ足りないと感じます(ちょっと違う気もしますが…)
胤栄や石舟斎が見ているものが分かるまで斬りまくると息巻く武蔵は、誰かに見つめられている感覚に陥ります。それは清十郎なのです!
朱美・清十郎・又八・おつう…それぞれの大晦日
朱美は清十郎に抱かれています。清十郎は伝七郎のことを案じ、もし腕を斬られたら自分が斬られたように痛むと言います。武蔵を知っている朱美に武蔵を溺れさせることが出来るかと問う清十郎…朱美は吉岡の嫁など分不相応と考えています
買った女と寝ている又八は、夢で妾の子だと言われたことを思い出します。おつうのことを想い、誰かと繋がっていたい又八は、京へ向かいます
武蔵は大晦日の真夜中宿を後にします。あと9日などと入れ込むなと、案山子を斬りながら硬くなっていると自覚します。戦いに臨む度に血を逆流させ一か八かの勝負を生き延びるのか?と疑問に感じる武蔵、すると勝つ前に勝っていたら戦いそのものが必要ないのかと悟ります。除夜の鐘が鳴り、武蔵・又八・おつうそれぞれが新年を迎えます
おつうは本位田のおばばに手を掛けそうになったことを悔いています。沢庵に慰められ、繋がりを作っていくのが人生だろうと諭されます。武蔵の噂を聞き、おつうもまた京に行こうと決めます
蓮台寺野、対清十郎戦!
吉岡では、恒例の初稽古が始まります。今年は伝七郎のためにと、吉岡十剣も気合が入っています。伝七郎は兄とのやり取りを思い出し、鷲のように飛べたら、蟻が歩いていることは見えないだろう、蟻は一歩一歩喜びを噛み締めながら歩いているのだと気を張ります
伝七郎の剛腕で太田黒が腕を負傷します。右腕はもう使い物にならないと分かると、太田黒は真剣で人を斬る稽古はなかなか出来ないと腕を差し出します。伝七郎は一太刀で太田黒の太い腕を斬り、清十郎に稽古を付けて貰いたいと感じます
武蔵は焚火をし野宿しようとしますが、寒くて眠れません。少し延焼させて火を剣に応用できないかと考えていると、背後に清十郎が現れます。洛北・蓮台寺野でのことです。清十郎は針のようなものを投げますが、武蔵は反応して避けてしまいます。自分にまとわりついていた目は清十郎だったのかと悟ります
武蔵は吉岡に都合の悪い人間をこのように闇に葬り去って来たのではないかと問います。最悪の場合を想定しつつ、斬り合いの前に恒例の「質問が…」と切り出します。清十郎に嗜まれ、結局斬り合いを始めることになります。「斬り合いが好きだろ?」と問われ、「大好きです」と答える武蔵(この言葉はSLAM DUNKの桜木の言葉に通じるものがあるのでしょうか?)、清十郎は一年前と圧力の質が変わったと感じます。丸みがあり、綿のような圧力だと…目を狙った一の太刀を、武蔵は額で受けます!
返す武蔵の一撃は濡れた綿のように重いのです!清十郎も最悪の場合を想定します
武蔵、清十郎を倒す!!
伝七郎は兄以外の剣に答えを求めようとしたことを愚かなことだったと悟ります。清十郎に稽古を付けて貰うため、寝ずに待つつもりです
武蔵は食いいるように清十郎を観察します。清十郎は斬り合う前に話したいと言った武蔵の気持ちが分かると言います。武蔵の振りから、清十郎が一の太刀を入れ、今度は武蔵が炎の中剛腕を振るいます!清十郎は避けてしまいます
一年前清十郎の剣を見れていて良かったと語る武蔵、今は見えていると豪語するため、清十郎は心臓に向けて鋭い突きを見せますが、武蔵は肩で受けてしまいます。一年前と変わったこと…武蔵の視界には胤栄と石舟斎という二人のじじいが住み着いているのです!かつて父が住み着いていた場所に…
清十郎の鋭い切り返しに瞬時に反応する武蔵、清十郎の剣が見える程変わったのかもなと述懐します。瞼を斬られた武蔵ですが、鍔迫り合いから逆に清十郎の瞼を傷つけ、同じだと喜びます。ずっと相手をしてくれなかった清十郎がやっとこっちに降りて来てくれたと…清十郎は何度一の太刀を打たせるのかこの男はと呆れます
武蔵は涎にも気づかぬ程意識は体の隅々へ、清十郎の一の太刀に後の先を合わせるためだけの体と化します。清十郎を斬り、吉岡一門との長い戦いが始まることになるという吹き出しで、この巻は終わります
まとめ
一年前の因縁に決着をつけるため、京に役者が揃います。一年間の武者修行で驚くほど腕を上げた武蔵、最早見えている舞台が違います。ただ、まだまだ人を斬る回数を重ねなければと考えており、血気盛んです
伝七郎は蟻のように一歩一歩堅実に、前に進んでいると実感していますが、無情にも武蔵は獣の姿から段違いに成長しています。清十郎は伝七郎と武蔵の現在地を冷静に分析し、決闘の前に闇に葬り去ろうとしますが、武蔵はその幻影に気づき、蓮台寺野での決闘となります
一年前は清十郎の一の太刀で額を割られ、何も出来なかった武蔵ですが、多くの経験を積み、今では清十郎の剣を見切ってしまいます。数々の修羅場を潜り抜けて来た濃密な一年間で、武蔵は最早達人の、常人では考えらえない域に達してしまっているのです
戦う前に勝っていたら戦う必要はないのでは…という気づきは、後程生きてくる訳ですが、まずは目の前の敵・清十郎を倒し、吉岡一門との長い戦いが始まろうとしています!これからの武蔵の動向、見逃せませんね!!
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