前回までのあらすじ
後日月島を騙した件を詫びつつ、戦争が終われば「例の計画」を実行に移すと鶴見中尉は言い、そのためには忠実な部下が必要だと月島を諭します。鶴見中尉がホーローで作らせた仮面を装着してみせます…
人斬り用一郎
尾形は麝香鹿を仕留めます。肉や毛皮にはそれ程価値はないのですが、麝香が香水として高く売れるのです。ホホチリを以前アチャが付けてくれた事からアシリパは父との思い出に触れ、キロランケは意図的にその話題を口にしたようです
土方は土井が隠し持っていたという’’ある物’’について聞き込みしますが、それらしい答えは得られません。宿を探しにアイヌの「やん衆」(季節労働者)に話すと、家でししゃもをご馳走になり、‘’ある物’’はエトゥピリカ(根室にいる海鳥)のくちばしだと分かります
土方は土井新蔵は偽名で、京都では「人斬り用一郎」として幕末に要人など何人もの暗殺を行った殺し屋だと言います。土井は老いぼれで一見ボケた爺さんにしか見えません。死んだ犬童側の人間が口封じに土井を探しています
根室まで探しに来た土方達、様々な経緯で今近くの漁場で働いていると知ります。土井はボケたのか海に向かって進んで行き、寸でのところで助けられますが、このまま漁場にいられては困ると話していると、刺客が現れ、土井の服を脱がすと刺青入りです
「池田孫七郎暗殺事件」を覚えているか?と刀を抜かれると、土井は手練れで瞬殺してしまいます。「列に並べ」という土井に、私が「列の先頭だ」と土方が現れます。更に犬童側の刺客も現れますが、土方・牛山に一掃されます。土井は若かりし頃の姿であるかのように天誅と敵を斬りつけます
岬で土方に追い詰められ、お互いが若かりし頃の姿に見えていたのは時間が止まっていたからなんだなと言い、土井は土方に斬られます。例のくちばしを渡され、天下国家のためと大勢殺し、この土地に流れ着いてアイヌ(人間)として生きた自分だけ申し訳ないと涙し、最後に妻の姿を見て土井は逝きます
土方は函館で死ねなかった事を負い目に感じていない、まだまだ走れるだろうガムシン(新八)?と言います
不死身の杉元ハラキリショー!
豊原で置き引きに遭った杉元は必死に犯人を追います。鯉戸少尉と犯人は曲芸のように追走劇を演じ、最終的に軽業師のテントで捕まえます。父が罰として盗んだ子(長吉)の顔を斬りますが、血が出ているのに斬れていません!これは刀に仕掛けがあり、「ハラキリ」の小道具なのです
曲馬団「ヤマダ一座」はロシアでの巡業を終え、樺太での公演を控えており、杉元は人伝手でアシリパを探すより樺太公演で「不死身の杉元ハラキリショー」を行い豊原に名前を轟かす方が手っ取り早いと言います。何人か欠員も出ているので、助っ人も兼ねて(特に身軽な鯉戸少尉)手伝う事になります
鯉戸少尉は驚異の身体能力を見せ、自転車も自在に乗りこなせ、軽業の天才なのです!杉元は「ハラキリ」、谷垣と尾形は「少女団」で踊る事になります。鯉戸少尉の方が明らかに目立ってしまうのを危惧する杉元ですが、鯉戸少尉はその気です
座長は「ハラキリ」の段取りを杉元に仕込みます。まるで本当に斬って血が流れているかのようですが、これは刃の部分に深い溝があり、唐紅の染料を固めたものが詰められており、水に溶けて血が流れたように見えるのです
杉元はやり方を教わり実践しますが、実体験も交え過剰な痛みへのリアクションを止めろと言われます。鯉戸少尉の溢れる才能に嫉妬しつつ、各々練習を重ね、本番を迎えます。満員御礼の中、鯉戸少尉は鶴見中尉の写真を追い、物凄い曲芸を披露し大喝采を浴びます(笑)
谷垣も踊り切り(笑)、いよいよ不死身の杉元ハラキリショー開幕です!鶴見中尉の写真は月島の仕業で、対抗意識の強い鯉戸少尉は杉元の刀を自分の軍刀にすり替えてしまいます。水を掛け勿体ぶりながら腕を斬ると、本当に斬れているのです!
ここまで来て後戻りできないので、杉元は足も斬り、ついには腹も斬ろうとするとロシア人がいきなり銃を向けてきたため、杉元は大立ち回りを見せ瞬殺(観客にはトリックだと思われています)、公演は大盛況で終わります
本当は座長狙いだったようで、ここで座長がスパイだった事が分かります。あれだけ身体を張ったものの、翌日の新聞の記事は小さく誤字付きで取り上げられ杉元は悔しがります(笑)座長から「アレクサンドロフスカヤ監獄」の事を聞き、キロランケの目的地だと見定めます
アシリパに父の足跡を敢えて追わせるキロランケ
アシリパ達は豊原の遥か北・敷香まで来ています。テンを見つけ、また、天葬という独特の文化に触れ、それも土葬に変わりつつあります。尾形がトナカイを射止めます!ウイルタ(遊牧民)に飼われているトナカイだったため、山トナカイ狩りを手伝えと言われます
キロランケは以前ウイルクも同じ事をしてしまったと言い、アシリパも倣い、明らかにウイルクの影を敢えて感じさせているようです。「オロチックウラー」=山トナカイ狩りの囮に使う「化けトナカイ」の事を思い出したアシリパ、その作戦で山トナカイを捕える事になります
尾形は正確な射撃を見せ、この地から山トナカイがいなくなる…と言われる程の山を築きます。山トナカイの肉は美味で、牛酪(バター)をパンに塗って食べるのもヒンナです。このウイルタとの接触はキロランケが意図的に仕組んだ事で、ロシアに入国するのに遊牧民族は自由に国境を出入りできるためなのです
ウイルタに変装したキロランケ達は橇でロシアに侵入します
鶴見中尉は1881年のロシア皇帝アレクサンドル2世の暗殺はキロランケの仕業だと知っており、キロランケがロシアに密入国する事をリークしてしまいます。国境を越えるとウイルタのオジサンが撃たれ、やはり狙われているようで、尾形がその正確な射撃から手練れの狙撃手だと感じたところでこの巻は終わります
まとめ
今巻での風変り人物は「人斬り用一郎」こと土井でしょう。最早ボケてしまっている風でしたが、有事に際しては抜群の強さを誇り、今まで数々の修羅場をくぐってきた事が分かります。土方に若かりし頃の面影を感じていた土井、結局妻の面影を抱き逝けた事は幸せだったかもしれません
杉元は広大な樺太でアシリパを自力で探すのは無理だと感じ、偶然居合わせた曲芸団の目玉演目を「不死身の杉元ハラキリショー」と題して多くの人に興味を持ってもらい、アシリパに行き着くように仕向けます。ところが曲芸の適正がある鯉戸少尉にばかり注目が集まり、しかも自身のハラキリは本物の刀にすり替えられたりと散々です
一波乱あり、座長がスパイであったことが分かり、キロランケの目的地が「アレクサンドロフスカヤ監獄」だと見定めます
キロランケはことある毎にアシリパに父親の面影を見させ、何か思い出させるように仕向けています。山トナカイを撃ったのも意図があり、遊牧民ならロシア国境を自由に出入りできる事に目を付け、変装して実行に移します
ところがこの事は鶴見中尉にリークされており、謎の刺客に狙撃されます。狙撃の名手・尾形が感心する程の腕前のこの男、一体何者なのでしょうか?17巻に続きます…
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