「バガボンド」31巻の数々の激戦と成長譚~おばば最後の教え…人生に寄り道などない!全てが繋がっているという感動的な一幕…そして武蔵、一刀斎と立ち会う?~

前回までのあらすじ

武蔵は「天の神サンよ、命を投げ出しぶつけるしかない相手ともう一度命のやりとりを、もう一度俺にくれ」と願います…

又八とおばば

武蔵柳生への険しい道を脚を引きずり杖で歩いています。すると後から付け回す男達がいます。「殺し合いの螺旋からは降りた」という武蔵は杖で円を作り、円の中に入ってくれば斬ると言います。結局入って来た男達を斬り伏せてしまいます

更に円に入って来た男達を斬り、武蔵石舟斎を想います。植田の亡霊は「その円の中に誘っているようにも見えるな」と言います

又八おばばが寺の世話になり、感謝を述べます。和尚(泰堂)はおばば又八が嘘を付いていることを見通していると言います。おばばは具合が悪く、今晩が山だと言われます。何とか一晩持って、又八おばばを担いで宮本村へ帰ると言います

又八は自分を武蔵と比べ惨めに感じてしまいます。おばばと自決しようとしますが、おばばは「この世に強い人なんておらん。強くあろうとする人、おるのはそれだけじゃ」と言います

おばばの教え

二十年前の宮本村お杉おばば)は村一番の女傑と言われながら、早くも夫を亡くしてしまいます。お杉は妾の子を本位田家の跡取りとして譲り受け、一人育てます。又八と名付けます

武蔵おばばのように強くないという又八は、滝からおばばもろとも飛び降りようとします。しかし肝心の一歩が踏み出せないのです。自身の弱さを吐露した又八に、おばばは「おぬしの未来は広がってゆく、八の字のごとく、負けるな」「一本の道を進むは美しい、じゃが普通はそうはいかぬもの、迷い、間違い、回り道もする、それでええ、振り返って御覧、あっちにぶつかりこっちにぶつかり、迷いに迷ったそなたの道は、きっと誰より広がっている」と言います

必ず出世して楽させるからなと言う又八に、「ええわいの、道が広がった分おぬしは誰よりも人に優しくできる、わしも武蔵もなれなかった人間になれる」と言います。おばば又八の背中の中で息絶えます

又八は寺に戻って来ます。最後に宮本村に着いたと嘘を付いてしまった又八、最後の見送りをします

何年も経ち、又八は語り部になっています。又八の話は巧みで、人気があります。あるが「本当の話なの?」と問うと、「ふふ、嘘なら散々ついてきた、もう十分だ、本当のことでいいってのは気持ちのいいもんさ」と言います。続きはまた明日と言って別れます

一刀斎との邂逅

武蔵は川で顔を洗っていると意外な人物に出くわします!伊藤一刀斎です。一刀斎は関ケ原での邂逅を思い出し、「あのときの小僧、つながった!宮本武蔵とはお主か!」と喜びます。武蔵一刀斎と認識していません。さっさとその場を後にし、茶屋で休んでいる武蔵は、石舟斎のいる道が分かっているのか?命のやりとりをもう一度…と考えていると、後方で一刀斎が待ち構えています

柳生に行くという武蔵に、一刀斎石舟斎は死んだと言います。以前一刀斎石州斎を訪ね、天下無双は二人の内どちらかか?と迫りましたが、石舟斎は動じませんでした。あれこそ天下無双と一刀斎は言います

己の全てをぶつけてもなお勝てるかどうかー儂らは生涯かけてそんな相手を探している…そうだろう武蔵?まるで宝でも探すようにーそんな相手がまだ見ぬ自分を引きずり出してくれるからだ」と言います

「やろう」と我執を解き放つ一刀斎。その凄まじい殺気に武蔵は包まれます。おつうのことを想いながら、武蔵は円を作り、「(中に)来るならば斬る」と言います。武蔵も我執を解き放ちます。そして一刀斎が隻腕ではないかと勘づきます。お互い刀を抜こうかというところでこの巻は終わります

まとめ

武蔵柳生を目指しながら追手に追われています。しかし、自ら斬りに行くことはなく、あくまで円に入ってきたら斬るというスタンスです。脚の深手もあって身動きは取れずとも討ち取ってしまうのですから流石の腕前です

又八おばばの最後を見取ります。おばばの最後の又八への教えはまるで自分のことを言われているかのような錯覚に誰しも陥るくらい、説得力のある、感動的な言葉でした。一本の道を進めるにこしたことはないですが、それが出来るのはほんの一部の人、回り道をして歩くことで自然と道は広がっている、決して無駄ではないという教えは、人生の教訓のようで、非常に心に残ります

散々嘘を付いて生きてきた又八も心を入れ直し、後程語り部となっていきます。実際見聞きしたことを面白おかしく語れるようになる又八、人生に正解などないと思わせる感動的な一幕です

武蔵一刀斎と出逢います。歳は取ってもそこはあの一刀斎、天下無双は自分だという我執は凄まじく、武蔵を目の前にし、宝が見つかったと喜びます。一刀斎武蔵も、剣でしか生きられない男、このまま勝負となるのでしょうか?しかし一刀斎は隻腕のようです…誰かに腕を斬られてしまったのでしょうか?気になりますね!続巻も読みましょう!!

おまけ

井上雄彦最後のマンガ展の記録映像作品として「いのうえの」というDVDがあります。連載執筆しながら、この個展に懸ける情熱は凄まじいものがあります。貴重な映像作品となりますので、ファンの方は是非ご覧下さい

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