前回までのあらすじ
小松は武田の新居を訪れ、自身に家族がいないと嘆くと、武田が産科の面々の写真を見ながら小松の家族はここにいると言い、小松がそうだねと感じ入ります…
母子感染症
院長の頼みでサクラは大学で母子感染症について講義する事になります。小松や下屋もはせ参じます。学生達は自分達には縁遠い話とあまり乗り気ではありませんが、サクラは将来的な事も踏まえ、若い世代に知っていて欲しいと話します
母子感染症の中で身近な感染症として、サイトメガロウイルス(抗体を持っていない妊婦が罹るとリスク大)、トキソプラズマ(主に経口感染・生肉や猫の糞等からの感染経路も)について取り上げます。どちらもワクチンが無く、血液検査で分かるという事で、今回の講義を頭の片隅に入れておいて欲しいと伝えます
妊婦の自殺
産後うつが原因で飛び降り自殺した女性がおり、下屋は心を痛めます。自殺した妊産婦のデータでは妊娠中が23人、産後1年未満が40人というものがあり、大量出血や病気で亡くなった妊産婦の約2倍の数なのです!一般的に育児は楽しくて幸せなものだという風潮があり、悩んでいる妊産婦も多いのです
2017年度から厚労省が産後うつ予防のため健診費の助成を始めました。産後ケア事業もまだまだ認知度は低く、出生率の低下に拍車を掛けています。妊娠中や産後は女性のライフサイクルの中で精神障害の発生率が最も高いと言われています。これらの充実無くして、妊産婦のケアは図れないのです
三浦は主任として部下からも信頼されていた中、妊娠も理由に会社を辞めます。夫の転勤でペルソナ医に来て、元職場の同僚からプロジェクトが三浦抜きでも上手くいきそうだと電話があり、三浦は憂鬱になります
三浦は仕事を辞めた事で緊張の糸が途切れ、更に完璧主義の母からの小言に嫌気も刺し、引っ越しの片づけ等が滞っています。久しぶりにペルソナ医を訪れ、小松はその異変に気付きます。夫は同僚からマタニティブルーの話を聞き、心配して早目に帰社すると、妻が外のゴミ箱にお酒の空き缶を捨てに行っているところに出くわします
妻が追い詰められていた事を悟った夫は優しい言葉を掛け、治まったかに見えましたが、神経質な母親からの電話が引き金となり、お酒を飲んで飛び降り自殺を図ってしまいます。救急に運ばれ、懸命な処置で何とか母子共に無事なものの、予断を許さない状態です
夫に状況を説明していると、心タンポナーデで三浦の血圧が下がり、下屋は適切な処置をし、加瀬は下屋が救急に欠かせない戦力になって来たと話します。ここで胎盤後血腫となり、緊急帝王切開となり、無事出産します
まだ意識を取り戻さない三浦の前で、下屋が母を諭すと、母はこの子を褒めてやった事がないと嘆きます。三浦は意識を取り戻し、サクラは優しく労わりますが、産科医でも助産師でも家族や友人でも誰か一人彼女の心の状態に気が付いて手を差し伸べられなかったのかと悔いります
記念撮影
小坂は同僚と飲んでいて、子供が出来ると奥さんの写真を撮り忘れがちになるという話から4Dエコーの話になり、その気になります。院長は出生率低下の予防措置として4Dエコーを特別料金で行わないか提案しますが、サクラ達に冷ややかに却下されます
エコー(超音波)は検査であり、妊娠中に4回の実施と決められています。小坂は4Dエコーを希望しますが、ペルソナ医は忙しく、行っていないと言われ、29週目ということもあり慌てて4Dエコー専門のクリニックを予約します
小坂の夫は記録を残す事に躍起になり、陣痛時も撮影OKということで、解説入りで映像を撮りますが、邪魔がられます。意気込みは買われますが、肝心の産まれる直前でビデオのバッテリーが切れるという失態を犯し、出産直後の写真しか手元には残りませんでしたが、頑張った後の素敵な写真だと皆に言われます
栄養素
好物のジャムパンを物色していた四宮は倉崎母娘と会い、呼び出しで初産婦の本間が産まれそうだと連絡が入り、気にかけていた倉崎も連れて行きます。倉崎が対応している間ユリカが四宮と一緒で大丈夫か皆心配しますが、絵本を読んで和やかに過ごしています
ゴローは妊婦に葉酸についての講釈を垂れ、サプリを活用している妊婦に、好き嫌いせずバランスの良い食事を摂ることが一番だと話します。ゴローもだいぶ産科医として板について来ました
四宮は持っていた絵本を全てユリカに持っていってやれと倉崎に言います。これは以前亡くなったつぼみのための物だったのです。売店のジャムパンは船越ではなくユリカが先に買って行ったようで、四宮はそれをプレゼントされ、ユリカと絵本を読むんだと嬉しそうに抱き上げるところでこの巻は終わります
まとめ
今巻のメインである妊婦の自殺では、8巻のマタニティブルーでも取り上げたように、この時期の妊婦はライフサイクルの中で精神障害の発生率が最も高く、注意が必要である事が取り上げられています。ただでさえ産まれ来る赤ちゃんの事で頭の中は一杯なのに、母親のメンタルのケアは疎かになりがちです
今回の三浦の場合、共働きで主任というある程度実力があった中育児に専念する事で何か虚脱感を覚え、それに拍車を掛けるように完璧主義者で子供を褒めて来なかった母親の存在が三浦を追い詰めてしまいます
自殺未遂も迅速な対応で何とか母子共に無事でしたが、今回の件が家族に残す傷跡は浅くないでしょう。どうしても赤ちゃんの事にばかり目が行きがちになりますが、責任感の強い真面目な妊婦であれば注意が必要な事は頭に入れておきたいですね
まだまだ続くコウノドリの世界、21巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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