前回までのあらすじ
険悪になりつつあるサオリとゴローは分娩室で口論となり、サクラにたしなまれます。二人が意見し合う事は良いことだとしつつ、あくまで裏でやることだと釘を刺し、受け入れます。相変わらず患者の肩を持つサオリと医師の立場から冷徹なゴローの意見は割れますが、言い合えるのは良い環境なのだと小松が諭します…
ソーシャルワーカー
SWの向井は過去お世話をした女性のネイルサロンで爪を整え、15年前に飛び込み分娩で手続等色々大変だった中、トモカを育てて自立していった姿に感慨深いものを感じます。外人が他人の保険証を使って受診して来たり、88歳の一人暮らし・志村がガンも見つかり施設入所へ向けて働きかける等その仕事は多岐に渡ります
松井は前夫との連れ子(ハヤト)がおり、二人目の妊娠に現夫のケンは喜びますが、どうやら前夫からDVを受けていたようなのです。現夫とはラブラブ状態なので問題ないと思われる中、一応注意深く見ていくと向井は慎重です
ハヤトはご近所さんからケンがベランダで煙草を吸っている事を注意して欲しいと言われますが、なかなか言える雰囲気にはなりません。結局言い出せず、クラスメイトからも指摘されイラつきます。助産師指導も兼ね小松と向井と松井が面談を行っていると、ハヤトがケンカして友達にケガをさせたと連絡が入ります
大事には至りませんでしたが、ハヤトは相手の首を絞めており、ケンは慌てます。ハヤトの事で揉めた妻(ホナミ)は、ついに元夫のDVの件をケンに明かします。また、ハヤトはケンの煙草を止めさせたいために煙草を盗み、それが先生にバレ、一連の喧嘩の原因が判明し、ケンの実子でない事をハヤトが告げ口されていたのだと気づきます
喧嘩相手に親子で謝りに行き、ケンとハヤトの関係は良くなります。向井は他にも抱えるケースがあり、大忙しで、今度は18トリソミーのモナへの対応に追われます。ホナミは無事出産、忙しそうな向井に感謝を告げます
新しいNICU<前編>
新井は武田の職場の新生児診療を担当しています。28週の大久保が早産となり、未熟児で蘇生が必要、新井は過去の出来事がフラッシュバックする中、完璧な対応をし、ドクターカーで現れた今橋と再会します。新井の健在ぶりを見て、今橋は嬉しかったようです
武田の息子(シュン)が具合が悪く、新井が診察すると、腸重責だと分かり、ペルソナ医に運ばれます。シュンは高圧浣腸という処置をされ、手術は避けられました。新井は久しぶりに元同僚達と会い、近況を報告し合います。加瀬は一度バーンアウトした医者が現場に戻って来るのはなかなか出来ない事だと言います
在宅医療も担う新井がペルソナ医に戻ってくれればと下屋は口を滑らします。在宅医療で携わっている森元の件から、母親への負担が大きくなっている事に気づきます。しばらくして新井がジョギングしていると、森元は疲れ果て、コノハを死なせてしまい、自首すると言うのです…
24時間医療ケアが必要な子の両親は睡眠不足や過労に陥りやすく、夫から離婚を切り出され、延命を怠ったのです。新井に全てを話し、せいせいした森元は警察に自首しますが、新井はコノハが障害を持って産まれたのはあなたのせいではないと言い切ります
久しぶりに小児循環器科に移った白川と再会し、心情を吐露すると、白川は新井をデイサービスに連れて行きます。ここは重度の医療ケア児も受け入れている数少ない施設で、白川はその意義や親子がお互い離れている時間は貴重だと言います
新井は再度今橋に会い、NICUを出た後の生活も踏まえた本人・家族へのケアが必要な事に同意し、もう一度ペルソナ医のNICUに戻らせて欲しいと話すところでこの巻は終わります
まとめ
本レビュー記載者は過去知的障害者通所施設で支援職員として働いていたため、今巻の終わりの見えない医療ケアについて感じ入る所があります。NICUしかり、特別支援学校しかり、ある程度の成長・年齢を区切りに卒業する事になる訳ですが、その次の行き場がなく、何とか通所施設に入れるか、最悪入所施設や在宅生活を強いられるケースがありました
これは、学校等は年齢という基準があるものの、障害を抱える家族にはその終わりが見えなく、ある種絶望的な将来展望を抱え生きて行かなくてはなりません。それが重度・最重度の障害となって来ると、そのケアは非常に繊細となり、家族が参ってしまうケースも数多くあります
新井は一度NICUから離れた事で外の世界を知り、NICUを出た後の生活も分かった上で、その子と家族を支えたいと再度ペルソナ医に戻りたいと今橋に話すのです!一度バーンアウトしてしまった新井ですが、元職場に戻る等なかなか出来る事ではありません
私は福祉業界を離れましたが、新井のように強い意志と信念を持つ医師が非常に羨ましく、眩しく見えます。今巻では<前編>でしたので、新井の今後の活躍に期待したいところです
物語も終盤に近づいてきました。30巻ではどんなお話が待っているでしょうか?
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